大阪の冬、寿し寅の蒸し寿司

博多を出発、大阪にくる。
行っておきたいお店があった。それで夕方、仕事をすませて覗いてみます。
千日前の通りズンズン。
西に向かった桜川という静かな街に「寿し寅」っていう小さなお店がポツンとある。

周りはどんどん開発されて、マンションビルが建ち並ぶ場所。
ココだけポツンと昭和な景色。昔ながらの建物に暖簾がかかり、中から明かりが漏れ出てきている。
やっているのか…、とちょっと心配になっちゃうような萎れた景色で、けれど扉をガラリと開けると中は明るい。4人がけのテーブル2つ。先客三組。相席になりますけれど…、と言われて座る。厨房を間近に感じる席に座って、おいしい匂いを胸いっぱいに吸い込み待った。

おじぃちゃまがひとりで切り盛り。
あぁ、まだ元気でらっしゃった…、とホッとしながら来れてよかったってしみじみ思う。
このおじぃちゃまに何かあったらこの店はどうなるんだろう。
継ぐ方はおそらくいなくて、ココの料理をもしかしたら永遠に食べられなくなるかもしれない。
勿体無いけど、しょうがないこと。こういうお店や料理が今、にhンのいろんなところに沢山あるに違いなく、そう思ったら切なくなっちゃう。

ゆっくり待ちます。
おじぃちゃまの仕事がゆっくり。丁寧な上、ひと組ひと組の料理を順に作っていくから本当にのんびり。
寿司屋といっても、上方寿司のお店です。
メインの商品は蒸し寿司、あるいは箱寿司でどちらも準備に時間がかかる。忙しい店は事前に準備して注文が入ったら蒸したり切ったりですぐ出せる。
けれどココは注文が入ってからしゃりあわせて具材を切ってと、とても丁寧に作っていくから一層時間がかかってしまう。
先を急ぐ夕方でもなく、のんびり待ちます。トントン素材を着る音がして、カシャカシャ酢飯と具材を合わせる音がする。しばらく静かになったと思うと、お待たせしましたと茶碗がひとつ。

たのんだ料理は蒸し寿司でした。寒い夜です。無性に湯気が恋しくて、それがこの店を思い出させたキッカケでもある。
茶碗の中から溢れ出しそうなほどにギッシリ。まず目を引くのは白いイカの切り身がドーンッと二切れあること。やわらかで強いクニュンと歯切れて強い旨味にウットリします。切り海苔どっさり。その切り海苔に混じって千切りのきくらげたっぷり。埋まるようにして栗の甘露煮、一個。桜いろしたでんぶが彩りそえる錦糸卵はふっくらやさしい。
それら具材の下には酢飯。甘辛ににたしいたけや焼けてバリッと香ばしい刻んだ穴子がたっぷり混ぜられ、しかもシットリ。
茶碗と一緒に蒸しているから、器の熱でずっと熱々。手から伝わる温度がゴチソウ。途中でサイドのガリをのっけて酸味と甘みをたしつつ味わう。

それにしてもココの酢飯は独特です。
酸味がやわらか。甘すぎず、酸っぱすぎずのほどよい感じ。
熱い酢飯でありながら、食べてコホンとすることがない。
しかも香りが特徴的。
どこかハーブのような、色にすれば紫色っぽい不思議な風味がしてくるところがここならではで懐かしい。
汁がつきます。おすましの出汁にとろろ昆布がタップリ入り、しかも鯛の切り身がひとつ。粉をはたいて旨味が外に出ぬように炊かれた切り身で、味わい濃厚。トゥルンと舌にのっかる感じもオゴチソウ。
厨房と客席の間を行ったり来たりしながら世話焼くじぃちゃまが、熱いお茶を入れました…、って土瓶をひとつ追加で置いた。置かれたテーブルの白木が見事に磨かれて、触るとスベスベしていることにも感心しました。アリガタシ。体も気持ちもあったまり、次に向かって歩きます。

 

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