売り物・売り方・売る相手「和牛ラーメンでお勉強」

今、飲食店で元気な業態はありますか…、って質問されると答えは「焼肉、あるいはラーメンでしょう」と答えることにしています。
元気の意味を「健全」ととらえるといささか答えは変わるのだけど、「勢いがあって増えている」とするなら、文句なくその二つ。中でもラーメンはインバウンド人気もあって、すごい勢いで増えている。
増えているということは、それだけ競合が激しくなるということでもあり、だからみんな必死に「差別化」を試みる。差別化にはふたつの方向があります。
ひとつは、普通のことを普通の人ができないレベルにし続けるということ。もうひとつは、普通の人がしないことを普通にすること。
前者はラーメン屋らしさを守りレベルを上げるということで、後者はラーメン屋らしからぬことを大げさでなく提案するということになる。前者はとてもむつかしく、時間がかかる。後者は案外簡単で、話題になればしばらく続く。でも人気の持続がむつかしい。東京では後者を狙う人が多くて、今日の店がそういう店の代表格。

メンショーサンフランシスコというお店。
なにからなにまで差別化の権化のようなお店です。
何しろまずサンフランシスコに本店がある。
和牛ラーメンが売り物の店。
場所は新宿駅の上にあるミロードという商業施設の飲食フロア。真っ白な店の作りは「ただのラーメン屋じゃないんだぞ」色をプンプン発散していて、なのに券売機が入り口にある。
しかもラーメンを買うと「一緒にいかがですか?」と大きなロボット声と共に画面が変わって餃子や玉子ご飯のようなサイド商品が表示される。インバウンド狙いの店なのにそのメッセージが日本語だけ…、っていうのが悲しい。
しかもその声、あまりに大きくてお客様が来るたび同じ言葉を繰り返すのがかなり痛くて居心地悪い。

鶏白湯と豆乳で仕上げた健康ラーメンっていうのもあるのだけれど、やっぱりここは和牛ラーメンを食べてみねばとボタンを探す。
値段にビックリ…、なんと1950円!同じ施設のカフェならばステーキランチを食べてお釣りが来る値段。ラーメンに付く値段をはるかに超えた値段の正体は「和牛につけることができる値段」ということなのでしょう。

やってくるラーメンのビジュアルはすばらしい。
丼の中を覆い尽くすサイズの牛肉。
しかも堂々、和牛です。
脂がしっかりのっていて、ローストビーフよろしく芯の部分はロゼ色。上に黄色いなにやらと、黄色いなにやらには茶色い粉。デイジーの花びらむしった芯の部分から花粉がこぼれ出したかのよう。
その正体はおろした柚子に粉カツオ。ローストビーフ以外の具材はメンマにネギ。すべてをつまんでレンゲにのせるときれいにおさまる程度の量。つまりあくまで肉が主役のラーメンだ…、ということになる。

まずは肉。ねっとりしてます。歯茎、奥歯にまとわりつくような濃密さで、脂がかなり強くてうまい。うまくはあるけどラーメンスープに合うかというとやっぱりラーメンには叉焼だなぁ…、ってしみじみ先達の知恵と経験に感心しちゃう。
肉の下には太めで縮れた麺がおさまり、スープは節系ベースの醤油味。節の酸味や苦味が後味すっきりさせてなかなか極上。和牛の力を借りずとも十分おいしいラーメンとして勝負できたかもしれないのにな…、って思ったりする。
歌手に芸人、俳優と人の人気を糧に生きてく類の人はヒット作がなくちゃいけない。でもあまりに印象の強いデビューやヒットに恵まれちゃうと、その色がついてその先、苦労する。普通のことを普通以上にすることが、どれほど大切…、ってしみじみ思う。お勉強。

 

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