坂の途中の酸辣湯麺。坂の上のシュークリーム

ファミマにオキニイリのカップスープがある。
「榮林」の酸辣湯。お湯を注いで混ぜるだけでできたとは思えぬほどに本格的で栄林名物の酸辣湯麺を強烈に思い出させる名品。
赤坂みすじ通りに面した立派なビルに店を構えてらっしゃった四川料理の名店。創業1956年。2021年春に閉店されて寂しく思っていたけれど、神楽坂に映る形で営業してる。行ってみようと思ってきてみる。
飯田橋の駅から坂をテクテク。毘沙門天さんを越えたところが地蔵坂。坂を再び上がっていくと小さな看板。建物と建物の間にできた細くて長いアプローチの突き当たり。エレベーターに乗って2階で降りると空気が変わる。
赤坂時代を思い出させる高級感あふれる意匠のエントランス。客席に案内されると大きな窓の向こうに竹林。思わずため息が出てしまうようなしつらえ。ゆったり配置された椅子テーブルも上質で、食べる前からおいしく感じる。いいお店。

ランチ限定の飲茶コースが目を惹いた。
一名分から注文できる。ランチコースはふたりからというお店が多くて、ひとりでも注文できるというところがうれしい。
「女性に人気」というキャッチフレーズも乙女が体の中におさまるおじさんだから惹かれて当然と思ってたのむ。
まずサラダ。ベイビーリーフに熟したトマト。やわらかく茹で上げられたカリフラワーが随所に潜み、ホロホロ崩れる食感がなんともたのしい。ゴマ油がアクセントになるさわやか系のドレッシングでお腹の入り口がパカっと開く。
スープが続いてやってくる。卵がフワッと浮かぶ上品な上湯スープ。短くきった春雨がツルンと舌を撫でて消えていくのがおいしい。あったまる。

せいろが運ばれ蓋を開けるとフワッと湯気が湧き上がる。
小籠包に焼売が2個。
エビ蒸し餃子。
小籠包には針生姜が添えられていて黒酢に生姜をくぐらせのせてハフっと食べる。
薄皮がプルンと爆ぜつつ破れると中から肉汁。
豚肉の餡がとろけていく食感を生姜がシャキッとひきしめる。

焼売のひとつは豚肉。ブルンとはぜる。ひとつは貝柱やエビのすり身をあわせて餡にした海鮮焼売。ザクザク歯切れて回線独特の豊かな旨みが口を潤す。
プルプルの生地でエビをくるんだ餃子も上等。そして今日のメインの酸辣湯麺がやってくる。
とろみのついたスープの中にふっくら仕上げの卵が漂う。細切りのタケノコ、椎茸、中国ハムがそこに混じって辣油が彩り、風味をそえる。

酸っぱく辛く、なめらかな喉越しのスープがおいしい。酸味も辛みもそれを支えるスープの旨みがあってこそ。口に入った瞬間は酸っぱく感じて、そこにゆっくり辛みが混じる。そしてそれらを追いかけるように旨みが顔をのぞかせてすっきりとした後口残して消えていく。
極細麺がスープを思う存分まとって口の中へとやってきて、ザクっと歯切れる。細いのにハリがあって噛みごたえがある好きな麺。タケノコのシャキシャキ、椎茸プルンと口の中がにぎわう感じは麺があっていればこそ。酸辣湯では味わうことができないたのしさ。ニッコリします。
ハーフサイズといえども満腹になるに十分。しかもスープがおいしく全部平らげ汗をかく。
胡麻団子に凍頂烏龍茶でうれしい幕引き。また来なくちゃって思って席を立ちました。

 

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「榮林」からなおもなだらかな坂道をのんびり歩く。
坂をほぼのぼりきったところの「コパン」で優雅な昼の〆。
セルフサービスの喫茶店。
カウンター周りはドトールコーヒーみたいだけれど、ゆったりとした空気がのどか。
入り口入ったところにショーケースがあって自家製ケーキが並んでる。
目当てはシュークリーム。コーヒーをお供にもらってテーブルにつく。お客さまはほぼご近所のシニアさんたち。常連さんたちがおしゃべりする様、まるで社交場。いい感じ。
好きなシュークリームです。大きくもなく小さくもないほどよいサイズ。生地をスパッと上下に切り分けカスタードクリームと生クリームが溢れ出すほどたっぷり絞って蓋して仕上げる。上に粉糖。触るとカサッと指をひっかくような感覚。乾いています。

クリームがたっぷりだからずっしり重く、かぶりつくと中身が溢れ出してきて収集がつかなくなるに違いないから、蓋をとってクリームをのせてパクって食べていく。
シュー生地自体は軽くてザクっと歯切れてこわれてく。
そこにクリームが混じってとろかす。舌が触った粉糖がシュワっと揮発するような感じもたのしく、生地の塩気や小麦の香りがクリームの甘味に混じって味がととのう。
ひたすらやわらかいポワポワ系のシュークリームでも、ずっとザクザク生地が主張し続けるパリブレスト系とも違って、カサカサがぽってりに置き換わっていくのがたのしいオキニイリ。下半分だけを食べればクリームをずっと支えていたせいで生地もなめらか。クリームが主役のお菓子のようにふるまい、それもよい。コーヒーの苦味と酸味で舌をととのえのんびり時間を無駄遣い。

 

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