喫茶店のナポリタン

ナポリタンスパゲティー。
一時期、時代遅れで格好悪い食べ物のように思われていた。扱う喫茶店がどんどん少なくなってきて、このままいったら日本にしかない独自の料理の居場所が減っていってなくなるんじゃないかと思うようなときもあった。
けれど人気再燃のようです。専門店も増えてきた。でもナポリタンのような料理は喫茶店で食べるのが一番居心地よくて、おいしいんじゃないかと思ったりする。
専門店で出そうとすると気合が入り過ぎちゃうように感じるのです。
例えばラーメンもよく似てて、ボクはそば屋のラーメンが好き。でもラーメン専門店の、特に行列狙いの気合の入ったラーメンはちょっと苦手。作り手の気合に負けぬよう食べ手も気合を入れなきゃいけない気がして、ふらっと立ち寄り気軽に食べることが失礼なように感じて敬遠しちゃう。

他にも例えば、焼きそばはスナックで食べるのがおいしく感じるし、カレーもやっぱりそば屋のが好き。
ナポリタンは喫茶店です。
特に古ぼけていて、昔からこのやり方で作っています…、って感じのお店のスパゲティー。
新宿御苑近くに「ドム」という喫茶店があって、そこのはドンピシャ。
おじちゃん、おばちゃん二人でやってる。ちょっと前におばちゃんの方が体を壊して、ご主人がいたわりながらの営業です。
ナポリタンをたのむとジャジャっジャジャっと厨房の方から麺を炒める湿った音がしてくる。ボクの中にある理想の喫茶店スパゲティーが作られる音。かなり長い時間、音は続いてそれに混じってピーマンの緑の香りがやってくる。間もなく音が静かになって、ナポリタンがやってくる。

分量は小腹満たし分ほどです。喫茶店の料理はこういう量がいい。
玉ねぎ、ピーマン、マッシュルームに薄切りのハム。具材の種類はオーソドクス。量はたっぷりで麺も含めてどれもがしっかり炒められてる。玉ねぎなんて飴色だし、ハムもところどころが焦げている。麺にも焦げ目がついていてトマトケチャップもしっかり麺にこびりつく。
ナポリタンにはみずみずしい系と乾いた系のふたつがある。前者はケチャップとトマトソースを麺にたっぷりまとわせ作る。イタリアのパスタ的なつくり方でアマトリチャーナのように仕上がっていく。それはそれでおいしいのだけど、ナポリタンとは違うと感じる。
ナポリタンはどれだけ炒めたかでおいしさが決まる料理だと思うから、ここのナポリタンのように乾いているのがボクの中では正統派。これならズルズルすすってもシャツを汚すこともないのもうれしい。

タバスコ、チーズをたっぷりかけてズルンと食べる。
塩でしっかり下味がついていて、ナポリタンは比較的少量。
ケチャップも炒められていて酸味がとれて味わいまろやか。甘みと酸味のバランスがよく、ケホケホ咳き込むようなこともなし。
ピーマンだけは最後におそらく入れたからでしょう…、シャキシャキしていて歯ざわりがよく、緑の香りがケチャップ味をすっきりさせる。麺は茹でおき。油でしっかり炒められ水気が抜けってムチムチとした歯ごたえがよい。
それにしてもなんでスパゲティーって麺ばかりが最初になくなって、具材ばかりが残っちゃうんだろうって不思議に思う。
ナポリタンをセットにするとサラダが味噌汁が選べるというのが、ハンバーグのような定食メニューがある喫茶店ならではで味噌汁選んだ。じゃがいも、豆腐、玉ねぎと具材たっぷりのおいしい味噌汁。甘いアイスコーヒーで食後の口をスッキリさせて午後の力になりました。

 

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コメント

  1. Michiko

    喫茶店のナポリタン、そばやのラーメン…常々自分が思っていたことの代弁、ありがとうございます!「おいしい満足」というのは、必ずしも美味を追求しつくした果てにあるものではない、ということをしばし感じます。シャキシャキ具を掻き集めて食した後の甘いアイスコーヒー、懐かしくなりました。

    • サカキシンイチロウ

      Michikoさん
      料理づくりに命をかけているんだからおいしいに違いない。そう思っておいしくすることばかりに必死になる人たちの努力は尊いとは思うのですけど、そういうお店に限って居心地が悪かったり、お客様の方をみていないなぁ…、と感じることが多かったりする。
      何事においてもバランスが大切なんだと、最近、ますます思うようになりました。

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