半年前の「ふたりで最後の赤坂」をなぞる…。

赤坂の街を歩いていたら4月の中旬。タナカくんと、この街を最後に歩いた日のことが思い出された。
緊急事態宣言が発動された赤坂の街で昼をどこかで食べようと、選んだ店が「観世水」という蕎麦の店。行ってみようかと思ったけれど今の時期、昼は系列の「沙伽羅」でやってるというのでちょっと歩いてお店に入る。
天井の高い気持ちのよい店。場所と名前は違っても、お茶を香炉で炊き上げた特徴的な香りは同じ。あぁ、あのときと同じだってハッとする。
そう言えば観世水は水が渦巻く様をいい、沙伽羅は水の守り神。うお座の君は水の星座の人だから何か縁があるのかなぁ…、って思ったりした。
あのときは天ぷらの盛り合わせをたのんで、穴子の天ぷらを追加した。今日は彼の大好物の穴子の天ぷらにせいろを合わせた。季節のせいろと田舎そばの2段重ねでひと揃え。

季節のせいろはゆず切りでした。細く繊細、なのにゴリゴリした歯ごたえがありゆずの香りが鼻から抜ける。田舎そばはみずみずしくて、極太の色黒のそばは水をたっぷり蓄えせいろの上に渦を巻く。まさに「観世水」でございます。
タレは醤油の味がくっきりとして酸味が強い。ズズッとそばをすすり上げると鼻から抜ける出汁の香りがまた旨い。
そして天ぷら。花が咲いたように穴子の上にチリチリ衣が張り付く仕上がり。蕎麦のお供により良いように、タレをくぐらせ食べてもへたらずザクザクとした歯ざわり、歯切れをたのしめる。むっちりとした分厚い穴子。うれしそうに食べてたよなぁ…、蕎麦湯と一緒にタレをゴクリン。なつかしい。

 

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その日はタナカくんの足がいつもよりも調子がよくて、せっかくだから甘いものも食べていこうよ…、と彼から誘って「しろたえ」に来た。
レアチーズケーキを一個づつ。
一階のショーケースの前でたのんで2階にあがって冷たい煎茶をたのんだ。
注文が届くまでボクは小用のために席を立ち、戻ってきたらテーブルの上は整っていた。
ところでここの冷たい飲み物は大きなグラスにたっぷりじゃなくちょっと中途半端な量だけ入ってくる。知ってはいたんだけどグラスをジッと見てたら彼が「ボクは飲んでないよ、ほら、ボクのグラスも同じ量でしょう」って言うからボクは大笑いした。

小さなケーキです。ほぼ、にぎり寿司一貫分。それをゆっくり時間をかけて味わうのです。底の部分はザクッと崩れるビスキュイ生地で、そのザクザクが上にのっかるチーズケーキ本体のなめらかでとろける食感を引き立てる。
甘い、酸っぱい、レモンの香りもさわやかでゆっくりじっくり。両端からちょっとづつ食べて最後にピスタチオが彩り添える真ん中部分をパクリ。
「もう一個食べたい気持ちを我慢できるって、ボク、すっかり大人になったでしょ」って言って笑った。それがこの店で彼が発した最後の言葉。あとはただただニコニコしながら無言で冷たい煎茶を飲んで、無言で席をたって帰った。階段を降りる彼のうれしそうな後ろ姿を思い出し、声を出して泣いちゃった。あと10日ほどで彼が逝って半年です。

 

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コメント

  1. Leocco

    切ないですね。

    榊さんのブログの一ファンでしかない私がいうのもなんですが、
    なんで田中さんはいってしまったんだろう。

    ニコニコと食事を楽しむ、田中さんの姿が私にも見えてきます。

    • サカキシンイチロウ サカキシンイチロウ

      Leoccoさん
      本当になんで逝っちゃったんでしょうネ。さみしくて、さみしくて、自分が自分じゃなくなっちゃったような気持ちにすらなります。
      でももしボクが先に逝ったとしたら、この寂しさを彼に感じさせてしまうことになったんだ…、と思うと、ボクが残されてよかったのかもしれないなぁと思ったりもします。

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