冬のてまえのボガマリ・クチーナ・マリナーラ

夜、ひさしぶりにボガマリ・クチーナ・マリナーラ。千駄ヶ谷にあるシーフードだけのイタリアンレストラン。
肉はおかない。季節の海の幸と野菜だけで料理を作り出す。
海は季節が変わるとまるで違った環境になり、それぞれ季節に応じた食材を育み、産み出す。海も本格的に冬に向かう準備がはじまる時期であります。どんなおいしいモノが今日は待ってるんだろう…、ってウキウキしながらお店を訪ねる。
メニューは無い。あるのはショーケースの中にたんと置かれた海の幸。その食材を見ながらお店の人たちと相談しながらメニューを決める。こんなモノが食べたい、あんなモノも食べてみたいと魚や貝をみながらあれこれ考えるのがたのしくて、ショーケースの中の素材を一切合切全部食べたくなっちゃうところが玉に瑕。ショーケースの前で説明を受ける順番くるまでまずはワインを抜いて、ぼんやり待ちます。

フォカッチャ、グリッシーニ。小エビを殻ごと揚げたフリットが紙にくるまれ用意されてて、それをつまみに白いワインをグビリグビリと。
軽い塩味と揚がったエビの殻の風味や旨味がワインをおいしくさせる。

それにしても食材の説明を丁寧にしてっくれること。
料理に対する関心や知識、経験が人によって違って当然。だからお客様一人ひとりにあわせて言葉を選び、料理を勧めてメニューを丁寧に決めていく。
サービスの基本ってこういうコミュニケーションなんだなぁ…、って、思ったりする。
ボクらの番がやってくる。

氷をぎっしり敷き詰めたショーケースの中にキレイに並ぶ魚介類。
定期的に霧吹きをかけて乾かぬように心がけ、色も鮮やか、食欲そそる。
もしこのショーケースに肉が並んでいて、果たしてこれほど食欲湧かすか…、というとかなり微妙なところ。
日本人には肉より魚なんだろうなぁ…、とれたての肉って生々しくて血生臭さすら感じさせるけど、とれたての魚は無条件でおいしく感じる。オモシロイ。
海が冷たくなると貝が豊富になってくる。モンサンミッシェルから届いたばかりのムール貝やら、ヒオウギ貝に大ハマグリ。伊勢海老、バチエビ、ワタリガニと種類豊富でたのしくなっちゃう。注文を決め、厨房の前の一等席に座って厨房みていると、シェフがグイッと手を伸ばしショーケースから素材を取り出す。まるで潮干狩りをしているみたいに見えたりするのがオモシロイ。

11月の中旬。ローマ人の楽しみといえばプンタレッラという野菜のサラダ。
今日はご用意できますよ…、とローマ人の気分を味わう。
セロリを裂いたような形の野菜。みずみずしくてシャキシャキ歯ごたえ痛快で、しかも苦味がおいしい。
オリーブオイルとレモンと塩で味を整え、グラノパダーノチーズと一緒に食べるというのが一般的。
そこにつぶ貝をくわえてもらって、シャキシャキ感とコリコリ感を同時に味わう。
それにしてもこの苦味。とても独特。噛むと苦味が一瞬走って、けれどそれが後をひかない。口がスッキリし続けて気づけばお腹が空いている…、ってよいスターター。牡蠣を2種類。スッキリタイプとネットリタイプ。どちらも塩の風味が美味しく舌の上を滑るようにしてお腹の中へとなだれ込む。

貝をカルトッチョで仕上げてもらう。紙包み焼きとかって言われる調理のスタイルで、ココではビニールシートで貝とトマト、ハーブを包んで加熱。旨味、香りが閉じ込められて、ハサミで包みを開けた途端においしい香りが噴き出してくる。
貝それぞれに特別の食感があり、味わい、風味もそれぞれ独特。レモンの酸味にトマトの旨味が貝の持ち味を引き立てなんともおいしい。直火ではない。自分の汁が蒸発し、自分で自分を蒸し上げた。だから旨味がギュギュッと凝縮されて貝の滋養を感じる。オゴチソウ。
たまった汁が、あまりにおいしくフォカッチャちぎって浸す。汁をグングン吸い込んで、口の中でジュワリと旨味が広がる。堪能します。

続いてパスタ。
これはちょっと迷いました。
メインディッシュをトマトの風味の濃厚味の料理をたのんだ。
その直前のパスタはさっぱり塩味で…、と思って何を具材にするか悩んだのです。
順当ならば、貝を使ってボンゴレ風に。けれど貝はカルトッチョにして心置きなく味わった。どうしようか…、と思っていたら、厨房の中から「今日はカジキがおいしいよ」って。
カジキマグロとパプリカを、タップリのにんにく、オリーブオイルに塩で味をととのえるのはいかがでしょうか…、とそれにする。
パスタは何?って、これまたちょっと悩んでいたら再び厨房の方から「キターラがいいよ」とうれしい神の一声。仰せの通りと出来上がる。

表面ざらつくフレッシュパスタ。断面四角く角張っていて、口の中で暴れ、ちらかる、存在感のあるパスタ。カジキの旨味。パプリカ独特の青い香りが鼻から抜けてタップリほどこしたイタリアンパセリの香りもさわやか。調理人が勧める料理は間違いないネ…、と感心します。

さてメインディッシュ。
ズッパ・ディ・ペッシェを作ってもらった。
ズッパはスープ。ペッシェは魚。つまり魚のスープで、イタリア的なるブイヤベースと思えばいいでしょ。
これを選んだ理由は、ワタリガニが大きくコロンと甲羅が丸く育った個体。
おいしそうに見え、これをおいしく食べるにはどうすりゃいいのか…、と訪ねてみるとスープにするのがいいでしょう…、って。
貝を加えて風味をつけて、魚を一尾。ショーケースの中にゴロンと転がっていたホウボウ選んでトマト味。木をくり抜いた大きな器でまずやってくる。
目の前のテーブルでカニ、貝、魚を取り出してスープは一旦厨房へ。
ホウボウ捌いて骨をとり、お皿にキレイに盛り付けたのをまた厨房に戻してそこにスープをかける。

熱々のスープをまとったホウボウのなんとおいしいことにウットリ。
ワタリガニの旨味がトマトスープにうつって、味わい濃厚。しっとりとした魚の肉にトロンとゼラチン質をたっぷり含んだ皮のなめらか。ホタテの柱にアサリにハマグリ。貝そのものもおいしいけれど、スープに溶け込む貝の風味がカニの旨味を一層深く、おいしくさせる。
ワタリガニの身もおいしいです。スベスベしていてハリがあり、ちょっと栗やナッツのような香り漂うやわらかな肉。パクっと口に含んでチュウチュウ、吸い込みながら味わった。こういう料理に夢中になると無口になります。指も汚れて無心になって、まるで子供に戻ったみたいな感じになれる。スープもゴクゴク、お皿の中はやがて空っぽ。堪能す。

ほどよき量で、甘い食後のたのしみ分だけお腹に余裕があったのですネ。
それでボクはカンノーリ。
シナモン風味のザクザク生地を、クルンと丸めて葉巻状にし中にピスタチオクリームをタップリつめてバリバリ食べる。
食べる直前にクリームを充填するから、生地はザクザク。本当においしい。
手づかみしながらこれをガリガリ頬張ると、シシリアマフィアになったみたいな気持ちがしてくる。
カヴァレリア・ルスティカーナを聞きながら、コレを食べたら死ぬんだよね…、なんていいつつバリバリ。
友人はピスタチオのアイスクリーム。ネットリ濃厚。ココのピスタチオジェラートはほぼ日本一のおいしいジェラート。エスプレッソのよきお供。

せっかくの夜。〆にイタリアのデザートワイン、ドンナフガータ・ベンリエもらう。ベリーや杏の香りが漂う甘酸っぱくて口がスッキリするワイン。気持ちがトロンとやわらかになる。オキニイリです、オキニイリ。

 

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