今年最後のボガマリ・クチーナ・マリナーラ

今日のランチで、来たけど予約で満席だったお店がボガマリ・クチーナ・マリナーラ。
1時過ぎでしたらお席があくかもしれません…、と言われてそれもいいかと思っていたら、電話が一本。
なんとそれが今宵の予約のキャンセル電話。
その席、頂戴できませんか?…、とお願いをして夜に出直す。

今年一杯はほぼ満席。
予約がとれるとするならば10時過ぎの遅い時間と言う繁盛ぶりで、なんとラッキー。
そう言えば、去年の年末はココの営業の最終日にラストゲストになったんだよなぁ…、魚を洗いざらい食べて帰ったコトをたのしく思い出す。
縁のある店、ない店があり、ココはなぜだか不思議なご縁のあるお店。

イタリア式のシーフードレストラン。海鮮類使った料理がおいしいお店はたくさんあるけど、野菜以外の食材がすべてシーフード。肉は一切扱わぬと言う徹底ぶりは東京広しと言えども珍しい。

日本のレストランはそもそもなんでも揃えすぎる。
いまどきイタリア料理のお店で生ハムを扱わぬのはお客様に対して失礼なんじゃないかとか。
赤身の肉のグリルを置かぬようではお客様に申し訳ないとか、顧客優先を建前にどこのお店も同じようなメニューになっちゃう。
自信を持って出せるものだけ提供するようにすれば、日本の飲食店はもっと個性的でたのしくなるのに…、っていつも思う。

そう言う意味でこの店には自信がないものや、お客様から言われたから置くような料理は何ひとつなく、どれもがお店が売りたいもの。しかもメニューがなくて、調理場の前のショーケースの中に置かれた魚介類を見ながら献立を決めていく。
ボクたちためだけの食卓ができるわけです、ワクワクします。

開店と同時にお店に飛び込んで、それでショーケースも無垢な状態。季節感にいつもうっとりさせられる。
今の季節はエビとカニが豊富に揃う。中でもオマールエビの元気なこと。
ボクらが近づくと爪を持ち上げ威嚇する。ただそう言う威嚇がボクらの目には、元気で活きが良くっておいしそう…、とうつるところがなんとも残酷(笑)。
とりあえずあの活きのいい子をひとつもらってメインに使っていただきましょう…、と徐々にメニューのイメージ湧いた。

冬の海に洗われおいしく仕上がった力強い素材の数々。
その実力に負けにようにとワインをちょっと奮発します。
シシリア産のシャルドネ。
昔ながらのブドウにこだわり、古典的で真っ当な作り方にもこだわるメーカー。
よきビンテージの一本で、モダンなエチケットのデザインまでもがイタリア的におしゃれな雰囲気。

キュッと栓を抜き、グラスに注ぐと明るい栗色。グラスを揺するとゆったり落ちるタレも濃厚。豊かな甘みと軽い酸味にお腹が疼く。
しかも丁寧に作られた良いワインのコト。
ひと飲みごとに味わい、風味が変わっていくのがとてもたのしい。
温度が上がると甘みがやさしくおだやかになり、代わりに酸味がシャープになってく。味の変化を言葉にしながら、それが会話のきっかけになったりするからワインはたのしい。
これって、からすみと一緒に食べるとおいしいかもね…、って言ったらマグロのカラスミが出てきちゃいます。
しっとりしていて辛味も旨味もキッパリとした濃厚な味。舌の上でとろけて魚卵の小さな粒が転がるような感じがステキ。ワインをおいしくしてくれる。

牡蠣を食べます。
宮城産と三重産2種類。それぞれ2個づつ、4ピース。
宮城産のは粒が大きくスルンとスマート。
ザクザク歯切れて強い旨味と軽い渋みが一気に爆発する感じ。
一方、三重産の牡蠣は小ぶりでお腹の部分がぷっくり太ってずんぐりむっくり。
舌にぽってりのっかって、噛むとトロリと歯茎に粘るような食感。
最初はさっぱりした味わいで、ところが後からあとから強い旨味が追いかけてくる。
海は命を育む畑。そこで育った命を食べてる…、体に滋養がみなぎる感じ。

続いて前菜。タコとひよこ豆を使った一品。
小さなタコを丸ごと茹でて、ぶつ切りにする。
だから頭も足もゴロゴロ入って食べるところで食感変わる。ムチムチだったりゴリゴリだったり、タコの歯ごたえが楽しくてずっと噛んでいたくなる。
味はタコの持ち味とひよこ豆の軽い甘みとオリーブオイル。ドライトマトにハーブで整う。
オリーブオイルが軽くてしかも緑の風味がさわやかなもの。ひよこ豆が砕けてホロリと粉っぽくなり、オリーブオイルに溶け込んだいろんな素材の味や風味をタコにしっかりまとわりつかせる。
一緒に添えられたルッコラが野生的な食感、味わい。ひと噛みごとに口がスッキリ、ワインをねだるオゴチソウ。

温かい前菜として貝とエビのパン粉焼き。選んだ素材はマテ貝、赤座海老にオオミゾガイ。二枚貝はパカンと開いて、エビも2枚に開いて上にたっぷりパン粉を乗せる。バターとハーブ。オーブンの中でこんがりパン粉が色づくところで出来上がり。
キュッキュッとオック場をひっかくような貝の食感。北寄貝に似たフッカリとした噛みごたえのオオミゾガイは旨みが強くてとてもジューシー。とは言え何よりおいしいのが貝の旨みを吸い込んでシットリ焦げたパン粉。エビに至ってはパン粉と身とが渾然一体。手づかみしながらむしゃぶりついて、指まで舐めて殻だけきれいに残して味わう。焼いているようで揚がってもいて、しかも貝やエビそのものは蒸しあがったような味わい。

パスタを何にしましょうか…、とココがこの店で一番悩んでしまうとこ。
だってショーケースの中のすべてのものがパスタの具材やソースにぴったり。魚のラグーもおいしいし、貝の旨みはどんなソースもひと味深い上等ソースにしてくれる。
貝はパン粉焼きで堪能したし、魚はメインのグリルをお願いすることにした。
選択肢がひとつ、そしてまたひとつ。
なくなる中で目についたのがワタリガニ。
大きく甲羅も丸く育って持たせてもらうとずっしり重い。
それを使ってリゾット、あるいはパスタができる。

トマトクリームの重たいソースに合わせて極太ショートパスタで作ってもらうことにして、出来上がってきた料理の香りおいしくうつくしいこと。それを目の前で見事な手際で取り分ける。
器に残ったソースを一滴たりとも残すマジと、スプーンで器の肌を何度も何度もこそげる仕草。なんとウレシイおもてなし。

ワタリガニのパスタというのは、どんなイタリアンレストランでも人気のメニュー。
けれどココのコレ。
やってきたときに思わず、「あれっ、カニの料理をたのんだっけか?」と思わず確かめようかと思ってしまったほどにカニの存在感が強かった。
見た目だけでなく、どこを食べてもカニの味。
それもそのはず。
ワタリガニの甲羅の内側にもツメの中にもほぼ身はなくて、すべてキレイにせせりだされてソースの中に混ぜ込まれてる。
身だけじゃない。
味噌も玉子もみんなソースの中にあり、だから蟹肉独特のシットリとしてスベスベとした食感のモノが当然みつかる。
かと思うと、ホツホツ、奥歯を叩いて潰れる卵のような食感もある。
トマトの甘味や酸味もすべて、カニの旨みを引き立てるため。
まるでカニがパスタの形に変わって口の中にある…、そんな感覚。オモシロイ。

パスタ自体も独特で、螺旋をなしてよれてねじれた不思議な形状。
分厚く、くニュックニュ、歯ごたえたくましい。
口の中で暴れて隅々撫で回す、ほどよき大きさが心地よくって、ずっと口の中で弄びつつたのしんでいたくなる存在感。
よじれた形状がソースをタップリからめとる。だから口の中にソースが溢れて、味わい濃密。ワインが旨い。結果ソースをたっぷり食べたはずなのに、お皿にソースがしたたかのこる。それをパンにのっけて食べると、パスタと一緒に食べるよりカニの旨味やソースの風味が直接舌に訴えかける。オゴチソウを食べているんだ…、と実感の湧くオゴチソウ。

そしてメインの炭焼きグリル。一番最初に選んだオマール。眼と眼があってこの子と選んだエビがパカンと開かれこんがり焼けてる。魚はホウボウ。パプリカ、玉ねぎ、かぼちゃにアンディーブと野菜様々。
オマールエビの身はシットリと。味噌はこんがり味わい深い。
身離れのいいホウボウは塩とオリーブオイルの風味で味わう趣向。白身の肉は魚というより鳥の胸肉を食べてるようなしっかりとした歯ごたえ、歯ざわり。ネットリとした皮も炭の香りをまとって、なんとも旨い。炭火焼きをおいしくするため、最近、備長炭を上等なものに変えたんですよ…、強火ならではのふっくらした味をたのしんでくださいネ。なるほどおいしい料理には色々理由があるんだなぁと感心しました。腹満ちる。

甘いものでお腹に蓋する。
だってこのままぼんやりしてたら、またショーケースまで歩いていって料理をひとつやふたつ追加しちゃいそうな気持ちよさ。
それでデザート。
珍しいかな、アップルストゥルーデルがメニューにあった。
ヨーロッパ式のアップルパイ。
ピスタチオのアイスクリームをちょっと添え、一緒に食べるとリンゴの蜜煮のきな粉和えみたいな味がするのに笑う。ピスタチオの上等なのってきな粉な風味がしてくるのです。オモシロイ。
もう一種類はパネトーネ。
冬の焼き菓子。ポッテリとして、口に含むと唾液でネットリ、クリーミーになるスポンジ菓子でそこにタップリザバイオーネ。オレンジピールの酸味と苦味。香りさわやかで味わい楽しい。グラッパもらって食後のお腹をスッキリさせて、また来年もよろしくね…、とお礼をしながら、さぁ、帰る。

 

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コメント

  1. kiko

    夏に訪問した際はキッチン近くの席を是非にとのアドバイスをいただき、おかげさまで楽しいひと時を過ごすことができました。
    家族みんなで感嘆の声をあげながら、ニコニコ笑顔で食事ができる素敵なレストランでした。

    • サカキシンイチロウ サカキシンイチロウ

      kikoさん
      魚介類ってこんなに多彩で、いろんなモノがあるんだとショーケースを見ているだけでもたのしいですよね。
      特にキッチン前の席は、厨房の様子も眺めることができて臨場感満点。ただ、出来上がっていく料理をみんな食べたくなるのが玉に瑕(笑)。
      季節、季節で厨房前の景色も変わっていく店です。いろんな季節を味わい尽くしたくなっちゃいますね。

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