並木藪のたまごとじ。珈琲アロマのオニオントースト

九州の友人がひさしぶりにやってきて、軽くランチをご一緒しましょう…、とうれしいお誘い。
博多から成田到着の飛行機で食事の時間が14時前後になるという。ならば東京の東側。浅草でお目にかかりましょうか…、と約束をした。
ひさしぶりの浅草です。とびきりのそばを遅めの朝食代わりにいたしましょうと「並木藪蕎麦」にやってくる。
ここのお店の空気がまず好き。
明るくってやわらかで、お店の人の仕草や言葉遣いがやさしい。さみしい気持ちがおだやかになる感じがステキ。
料理も一流。そばのメニューは10種類ほどの古典的な定番ばかり。ひと通り食べてみたけどどれもおいしい。特に「たまごとじそば」は比類なきおいしさで、ふくよかにしてやさしい味わい。今のボクの体にピッタリ。それにする。

そばの上を覆う玉子のうつくしいこと。出汁を飲み込みふっくらふんわり。黄金色に光り輝きまぶしいほどで、優雅なさまは女王の風格。まるで組み上げ湯葉のようにチリチリよじれて儚く揺れる。玉子の下に海苔が一枚。汁を吸ってとろけて玉子と一緒にスルンと口の中へとすべり込む。
熱がしっかり入っているのに固まっているわけじゃない玉子の食感は肉感的にしてなめらか。バッサリ歯切れる端正なそばの食感ひきたて、口を潤すおゴチソウ。
熱いそばではあるけれどわさびがついてくるのがここの流儀。そば、出汁、玉子にわさびの香りがせめぎ合いつつ混じり合う。
食べ終える頃合いに木製の急須に入った蕎麦湯がやってきて、ネギと一緒に汁に注いでズズッとすする。全部飲みたくなるところ、塩分と水分制限中の身ゆえ我慢で、ゴチソウサン。しばらく静かだったこの店にもかつてに行列が戻っていました。ホッとする。

 

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浅草の街をぶらりぶらりと散歩して、友人と会い「珈琲アロマ」にやってくる。
枯れてなおみずみずしさを無くさぬ浅草という街に、ここほどふさわしい店はないんじゃないかと思うオキニイリ。
昭和喫茶が好きな友人をいつか連れてきたいと思ってた。
カウンターだけ。
1964年開業と言いますから、もう80は過ぎてらっしゃるに違いないマスターの若々しくてにこやかな様。
おなじみさんたちのたのしいお喋りもゴキゲンで、下町サロンみたいな雰囲気にニッコリします。前から食べたかったホットドッグをまずたのみ、今週会ったばかりの浅草生まれ浅草育ちの友人が「アロマのオニオントーストは経験すべき名品ですよ」って言っていたのを思い出し、オニオントーストも追加する。お供は大好きな杏のジュース。

氷と杏。
水と砂糖をミキサーに入れガシャガシャジャジャっとかき混ぜ作る。
ミキサーが壊れやしないかしらと心配になるほど激しい音と振動のすえ出来上がるジュースはまるでシャーベットのよう。
冷たくなめらか。ぽってり口にやってきてサラッととける。かなり酸っぱく背筋が思わずシャンとするのがオキニイリ。

さてオニオントースト。
ペリカンの食パンを2枚。トーストをしてマヨネーズを塗り、生のオニオンスライスとピクルスを挟んで胡椒をふりかけただけ。なのに驚いたことにまるでエビフライのサンドイッチみたいな味がするんです。まさかと思ってパンをめくって中を見るもあるのは玉ねぎとピクルスばかり。
それらがマヨネーズが混じり合ってタルタルソースのような味になる。焦げたトーストのカサカサとした食感と香ばしさがフライを食べてるようで、その組み合わせがエビフライサンドイッチを食べてるように頭を勘違いさせるのでしょう。

ホットドッグはアルミホイルに包まれてくる。細長いドッグロールの中にはソーセージと千切りキャベツ。たっぷりのマスタードマヨネーズと黒胡椒。特別な食材は使ってないのに、しみじみおいしいのはオニオントーストとまるで同じでマスターの人柄を感じてニッコリ。
オニオントーストもホットドッグも胡椒がピリリと後味ひきしめ口のすみずみよろこばす。
大きな氷からカンカンかち割り氷を削り出す力強い手元や、パンをザクッと見事に切り分ける手際を見てると食事を終えてもさり難く、熱いコーヒーをおかわりして飲む。お湯で温められたカップがコーヒーを注ぐ前から湯気を出す。深い苦味と自然な甘み。ミルクを入れると酸味が消えて、味わいやさしくなっていくのもオキニイリ。

 

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コメント

  1. コル

    先日珍しく浅草へ行ったので蕎麦でもと思ったらこちらがおやすみで、橋を渡った方でもりそばを頼んだら・・からい!
    東京の蕎麦はからいとか、つゆに全部つけへんてのはこういうのを言うんやとわかりました。
    東京も長なってきたと思ってましたが、パンチをくらいました。こういう濃い味も慣れたらおいしく感じるんですかね?

    • サカキシンイチロウ

      コルさん
      特にこの店や橋を渡ったところのそばつゆは辛いです。
      落語の演目に、死ぬまでに一度でもとっぷり蕎麦をつゆに浸して食べたかったというくだりがありますが、たしかにちょこんとつけて食べる料理のように感じますネ。
      ただ、東京にも辛くない、どっぷりひたしてもおいしいそばつゆのお店があります。例えば砂場や永坂更科の系統は辛味ほどほど旨味がしっかりとした味わい。
      ただ、タレがくっきりと辛いからこそ蕎麦湯でわっておいしく味わえるということもあるのですけれど…。
      なやましいところです。

  2. nt

    こういうなんでもない?喫茶店の秀逸な一品を知ってるのって素敵です。ずっと真面目にやってるお店の確かな味を教えてくれたり教えたりできるお友達が居て良いですね。

    • サカキシンイチロウ

      ntさん
      カフェでもなく、ヒットを狙ったわけでもないただただ普通の喫茶店が大好きでしょうがないんです。
      そういうお店が何十年も守ってきたおいしいものを、気軽な値段で気軽にたのしめる。なんてステキなことなんでしょう。

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