不器用であるということの価値

牛たんの「太助」が有楽町の交通会館にできていた。
太助といえば仙台式の牛たん焼きの元祖と言われた名店で、実は東北新幹線が上野始発になった1983年の夏、どうしても食べてみたくて新幹線に飛び乗り食べにいったことがある。
古ぼけていて無愛想で、メニューはたん焼き、麦飯、テールスープしかない店で、けれど今まで食べたことがないおいしさに驚いた。
それからたまに食べたくなると新幹線に乗っていた。そこで修行した人が後楽園の駅の近くに「一心」って店をやっててそちらは頻繁にお世話になった。太助で修行したから一心なんだよね…、なん言いつつて行って食べるたびに仙台に次はいついけるだろうって思ったりした。そのお店はなくなった。
あの太助がねぇ…、と思って店に入るとなんだか様子がちょっと違った。塩味以外に味噌味なんていうのもあって、調べてみたら虎ノ門の太助の分店を山形の会社が買ってそこからスタートした別のブランド。

元祖は「味太助」って名前になってて今日のお店は「杜の都太助」って名前。元祖が店名を変えなきゃいけなかったというところに、いろいろ大人の事情があったんだろうなぁ…、って思った。
分店からのスタートだからもとはおそらく太助の味だったんだろうけど食べながら、こんな味だったっけってずっと思いながら食べることになる。食べすすめるにしたがってどんどん自分の味の記憶に自信がなくなる。テールスープもちょっと甘めでサービス精神が旺盛な味。
ボクが行って頃の太助といえば、サービスも商品構成もぶっきらぼうで「うちに来たからにはこれを食って帰ればいいんだ」っていい意味での頑固で突き放したところがあった。それが良くって好きだったのに、ここの料理はお客様に媚びを売るような感じでそれがちょっと苦手でなやましい。

 

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お客様によろこんでもらおうと思ってサービス精神を発揮する。
どんなお店もやることです。
ただ、サービス精神もすぎると粋じゃなくなってしまう。特にかつて不器用なほどに頑固なこだわりをもったお店が手のひらをかえしたようにサービス精神旺盛になっちゃうと、もったいなくって「なんで?」って思う。
今日、ひさしぶりにやってきた「エスプレッサメンテイリー」ってエスプレッソバーにそんな感じをもった。
サントリー系のプロントが経営しているチェーンで、イタリアのコーヒー大手のイリーがブランドコントロールをしていた。だから頑なにイタリア的でメニューの種類もひきしまってた。おいしいエスプレッソを飲みたいならうちを選べば間違いないよ…、ってわかりやすいメッセージをもった店だった。けれどどんどんプロント風になってくる。

作りおきのサンドイッチがたくさんあります。スパゲティーも充実してる。コーヒー関係のメニューだけでも20種類以上。他のソフトドリンクが同じく20種類ほどあり、メニューをみても一度に把握できないほどのバリエーション。
ちょっと上等なプロントみたいな感じさえする。
成功体験をもった会社はその成功を他のブランド、業態にもあてはめたくなるものでもあって、イリーらしさがどんどん失せる。今流行りのマリトッツォまで売っていました。あまり売れてないみたいだけど…(笑)。
エスプレッソはやっぱりおいしい。ここのマキアートは香ばしいけど飲みやすい。酸味控えめであとに甘みが残ってずっと香りも続く。ぽってりとした飲み口もとても上等。だからなおさらもったいない。

 

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