ラインにグラン。水道橋から神保町
長い間いってないなぁ…、と思って水道橋のカフェラインにやってくる。
隣のビルに工事囲い。おじいちゃんがやってた自転車屋さんが閉業したんだって時の流れをしみじみ感じる。
朝から昼はカフェ、夜になるとお酒も飲めるバーレストラン。居心地の良い空間を心地よい音が満たす気持ち良い店。ご主人、奥さん、おばあちゃまとお店の人は変わらず元気で「おひさしぶりです」って互いに言い合いはじまる朝はまた格別です。
テーブルの上に灰皿。けれど煙が嫌じゃない店。むしろタバコの煙が似合う店。
サンドイッチのモーニングセットにアイスコーヒーで朝をはじめる。ミックスサンドにレタスときゅうりのサラダ、ゆで卵でひと揃え。

このサラダがおいしくってネ。
塩と油、少量の酸味をくわえて休ませたみずみずしい仕上がりで、まるでおひたしみたいな食感、そして味わいなのね。
体が潤う感じがたのしい。
サラダを全部まず食べて、卵の殻をぺりぺり剥いて器に入れる。
今日は気持ちいいほどスルンとキレイに剥けてニッコリ。ふた口サイズで味がみっちり濃厚だった。
そしてメインのサンドイッチ。焼かずに仕上げたミックスサンド。卵サラダにトマトにハム、そしてきゅうりと具材たっぷり。胡椒をパラっとふりかけ食べる。
昔、ここにはトーストサンドイッチがあってそのパンの焼き加減が見事で、具材は少なくおいしいトーストを味わうような仕上がりだった。
あれも好きではあったけど、ふっかりやわらかなパンと一緒にやってきて、口を満たしてとろけて消えるやさしい食感の今のサンドイッチも悪くない。
今から15年ほど前に会社を整理したあとに、ここの近所に事務所を構えた。出張がちで会社に出るのは週に一回程度のことで、そのたびここで朝をとってた。一度失敗した身には再出発はかなり厳しく、でも傍にずっとタナカくんがいてくれたのネ。ここにくるとそんな当時のことをしみじみ思い出す。
スティーリーダンやグレンフライ、ボズスキャッグスなんかが流れてくるから、昔を思う気持ちに拍車がかかってキュンとなる。
水道橋から神保町に向かってぶらりぶらりと歩いてまわる。
水道橋の駅の北側は東京ドームがデンと構える区画大きなのびやかな町。線路を挟んだ反対側は一転、日本大学の城下町。古本屋の町であった時代から細々とした店が建ち並ぶ個性的で活気に満ちた町だったけど、チェーン店が増えました。
それに多くの大学が入学生の減少に苦しんでいると言われているのに日本大学の景気の良いこと。大学ビルをガンガン作って街の景色を変え続けてる。
家賃も高くなったのでしょう…。
手軽な値段で腹一杯を保証してくれる店がどんどん姿を消してる。
なやましい。
土曜日はキッチングランはお休みとわかっていてもお店を覗いてみたくなり、お店に行ったらドアに張り紙。
みると移転のために一旦閉店と書いてある。
隣に移転と書いてあり、しかも5月末には再開業ともあって見るもいまだに店の姿にはなってない。
キッチングランの隣といえば半ちゃんラーメンの発祥の店とも言われた「さぶちゃん」があった場所。キッチングランの裏側にあり、そのまた奥には「近江や」という日本料理のお店があった。その三軒はご兄弟がそれぞれ営業していた店で、まずさぶちゃんが、そして近江やが閉業し初代を亡くしたキッチングランだけ親戚の方がついでずっと営業してた。
フライパンから蒸発する油で肺が焼けて体を壊されたことがきっかけの死とも漏れ聞こえ、文字通り命がけで暖簾を守ってらっしゃったんだなぁ…、と頭を下げた思い出がある。
二代目店主のキッチングランは一族総出でがんばってたけど手伝ってくれる人たちをなくして結局ご主人一人の営業体制。隣の店は小さくてひとりで守るにほどよい規模ということもあっての決断なのでしょう。
タナカくんが大好きだったお店です。再開したらこなくちゃと思って場所をあとにする。






