ファウンダー・「ハンバーガー帝国のヒミツ」

マクドナルドのハンバーガーの作り方はちょっと特別。
普通、ハンバーガーを作るときには、二枚に切り分けたバンズの下半分にパテを乗せピクルス、オニオン。ケチャップ、マスタードをプチュっと搾りバンズの上半分で蓋して完成。…、させるもの。
ところがマクドナルドではそのやり方の逆で作っていく。
バンズの上半分の内側にケチャップ、マスタードをのせたところにピクルス、レリッシュ。そこにパテ。最後にバンズの下半分をのせる。
なぜ天地逆転、ひっくり返して作っていくのかと言えば、逆さに作ったハンバーガーの下にあらかじめ敷いておいた紙でくるんで完成させるから。

完成したハンバーガーを紙の上にうつして包み、しかもお店のロゴの入った部分が一番上に収まるようにするためには、大きな紙が必要となる。
完成してからひっくり返し、紙の上にのせようとすると形が崩れる。
しかも二度手間。
裏表にした包装紙の中心に描かれたロゴを目印にして、逆さに作れば「最小の紙で短時間にして合理的に、しかも失敗なく」ハンバーガーを包めるワケです。

マクドナルドが世界一の外食チェーンになる歴史のはじまりを描いた映画、「ファウンダー」を観ていて、マクドナルドのファウンダー、つまり創業者はマクドナルドという会社を、マクドナルドのハンバーガーを作るように作ったんだなぁ…、と思った。

もともとマクドナルド兄弟という勤勉で創意に満ちた努力家が作りあげた小さな街の小さな店がマクドナルドのはじまりです。
けれど、そのマクドナルド兄弟が今のマクドナルドのファウンダーかというとそうじゃない。レイ・クロックという人が世界一の外食チェーンになるべくさまざまな工夫を凝らして今のマクドナルドになった。
その過程を知るにつけ、彼はなにかを積み上げることでマクドナルドを作ったのじゃなく、その完成形をイメージしながら逆算式に会社を作った。それも極めて合理的に確実に、しかも失敗のない形で。

確実で、スピーディーで、しかもいつも同じ品質の料理が渇望されていた時代だったからでしょう。
不況にあって職の機会に人々が飢えていた時代でもあり、供給が新たな需要を作り続けるに違いないと無邪気に信じることができる時代の話。
そう思いながら観れば、ハンバーガーの世界的チェーンのファウンダーの話ではなく、20世紀のある側面を作った人の話とよめる。

思いがけずも泣けました。
マクドナルド兄弟が完璧なオペレーションシステムを作り上げるためにシミュレーションを繰り返すシーン。
レイ・クロックがフランチャイズを金持ちの道楽ではなく、「夫婦で働けば確実に食える」システムに変え、確実に食えるようになった人から感謝されて喜ぶシーン。
マクドナルド兄弟が、自分たちの創意の結晶が自分たちのモノでなくなってしまったときに、それでも自分たちの店をやろうと決意するシーン。夢と残酷な現実が行ったり来たりするその要所要所で、不思議なほどに涙を誘う。

ちなみにこの映画の最も残酷なところ。
それはマクドナルドの大成功のきっかけは、システムとノウハウを売るフランチャイズ本部から、不動産業への転身を図ったから…、という部分。

おいしい料理を誠心誠意作り続け、笑顔絶やさず勤勉に働いたとしてもそのシアワセは小さなモノ。
そうレイ・クロックは思うのです。
レイ・クロックは「継続こそが成功の唯一の条件」と信じ、それを実践した人。
最初は誰よりも早く店に出て、誰よりも遅くまで店舗にいて店舗のスタッフと語り合い、ゴミを拾って店をキレイにすることを「継続」していた。
けれどそうしたことの継続はフランチャイズに押し付けて、「継続的に家賃収入を手にする」努力を継続する人になっていく。

飲食店を他のビジネスの道具に使った、おそらく世界で最初の人が、世界で最も外食産業で成功をした人になったというこの皮肉。
そして現実。切なくなると同時にそれも20世紀で終わりの出来事。21世紀の新たな飲食店の作り方を考えなくちゃいけない時期…、って思うと背筋が伸びました。

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