ビーフのコンソメ、ヒラメのボンファム、マワルソラ

今日は「来てみたかったところ」で「食べたかったもの」を食べる昼。
来てみたかったところとは、有楽町の駅の真ん前にある交通会館の最上階。四角いビルの上に丸い円盤状の構造物。時間をかけてゆっくり回る構造の、回転レストラン。
運営するのは「東京會舘」。日本におけるフランス料理の流派のひとつとなってさえる老舗が運営している「銀座スカイラウンジ」というお店。
そこで食べたかったのは東京會舘を代表するコンソメスープとヒラメのボンファム。予約までしてやってきました。
15階という高さです。今でこそ、これよりもっと高いビルはたくさんある。けれどビルができた50年も前にはさぞかし景色がよかっただろうと思わせる。それにこの高さ。上から見下ろす威張った目線じゃなくて、自然な目線の先にすべての景色がおさまる。街がやさしく見えるのがいい。

ちなみに回転レストラン。ここを含めて8ヶ所、日本にあるんだという。札幌、つくば、京都に神戸、広島でそのうち3つは体験済み。なんだか全部の回転レストランをいつか制覇したくなる。
白いテーブルクロスに磨き上げられたシルバー、グラス。ただの展望レストランと思って来るとビックリするほどキチンとしている。サービススタッフの数も十分。サービスはうやうやしくてタイミングよし。まずは前菜を兼ねたサラダがやってくる。ブラウンマッシュルームに茄子にれんこん。ハーブ野菜にエディブルフラワー。キレイに装われたお皿の中を散らかし何が入っているかを観察しながら味わうステキ。秋の野山に分け入る感じがオゴチソウ。

東京駅の南の端からスタートしました。しばらくするととある看板。
白地に「ぢ」と真っ赤な文字が描かれている。昔、通った中国料理屋のオキニイリの個室の窓の正面にその文字がくっきり浮かんで、乾杯しながら笑ったものです。思い出す。

ビーフコンソメがやってくる。
テーブルに置かれた瞬間、濃厚な牛肉由来の匂いが漂う。
深い飴色。スプーンで軽くひとすくい。舌にのせるとジワリジワリと広がる旨味に広がる香り。最後に明るい酸味が残る。
おいしい料理には飛び上がるほどのおいしさと、腰を抜かすほどのおいしさがあって、これはまさに腰が抜けるほど重厚で、ドッシリとした旨味に気持ちが翻弄される。あぁ、おいしいとしみじみ思う。
体の芯に染み込む滋養と味わいにもったいなさすら感じるゴチソウ。最期の瞬間に食べたい料理のひとつに入るオキニイリです。アリガタし。

それからもひとつ。食べたかったこれ。メインのヒラメのボンファム登場。
熱々のお皿の中にはグラタン状の焼けたベシャメルソースがたっぷり。中央部分に隠れているのはヒラメのフィレです。ワインで蒸して、皮をのぞいて骨もとりさり再びヒラメの形に戻す。分厚くふっくら、しっとりとした身質も上等。そこにソースがたっぷりからみ口の中へとやってくる。
ちなみにボンファム。
Bonne Femmeと書き、訳すと「良き婦人」。あばぁちゃん風とか家庭風とかって料理の世界では使われることが多くて、これもソースをかけてオーブンで焼けばできるからご家庭風か…。
でもソースの中には刻んだマッシュルームがたっぷり混じり手間ひまかけた濃厚な味。ヒラメの下ごしらえも一流。プロの味。なによりソースのおいしいコトにはウットリで、バゲット使って拭って食べる。お皿はピカピカ。いい仕事をしてくれるバゲットくんに感謝のお昼。

ゆっくり時間をかけて味わい、なのにあっという間に思えるランチ。料理と料理の間を、変わりゆく街と空をながめてたのしむ食事は格別。
東京駅の向こうに京橋の街を探すことからはじまって、銀座一丁目からゆっくり二丁目、三丁目。遠く向こうに豊洲のビルが見えてくる。すると右手に王子製紙の銀座のビル。あの界隈が銀座の中心。山手線や新幹線が走る線路を眼下に眺め、日比谷公園、皇居が近くに見えてくる。皇居の向こうに赤坂、四谷、市ヶ谷と街が続いて一瞬空が広くなる。
レンゾピアノの東京フォーラム、丸の内の超高層ビル群が近づく頃が、ちょうど1時間ほどたった時分。デザート食べつつのんびり今日の贅沢な昼を反芻してると昼の振り出し、東京駅が見えてくる。都合、80分の豊かな時間。一万円札を出したお釣りの意外な多さにニッコリしました。オキニイリ。

 

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コメント

  1. なすび

    おおーっこれはすばらしい透明なコンソメ!正統派で美しいです!ひらめの下のお皿もいいですね。
    bonne femme は、良き妻の、、、と見せかけて、「かの有名な(fame)」という中世フランス語からきていると料理の本に乗っていましたが、世がフェミニスト旋風吹き荒れていたころの本なのではたして?
    フランス料理はコンソメ(消費された)といい結構ふしぎなことばが多いですね。

    • サカキシンイチロウ サカキシンイチロウ

      なすびさん
      そもそも、レストラン自体が人を元気にしてくれる絶品のスープの名前だったなんて説を考えれば、どんな理由で名前がつけられようがびっくりしないのが、フランス料理のたのしいところですね。
      ここのコンソメ。
      丼一杯ゴクゴク飲みたくなってこまっちゃいます。

  2. マンダリン

    回転レストラン、いいですね!
    私は京都で経験しました。それと大昔の横浜です。
    写真を拝見してグラスに入っているライムのようなものに目が行きました。どんな飲み物なのか教えていただければ幸いです。

    • サカキシンイチロウ サカキシンイチロウ

      マンダリンさん
      横浜の回転レストランといえば横浜駅の東口側にあったスカイビルの最上階でらっしゃいましょうか。
      ボクも一度、伺ったことがありました。
      ライムの入ったグラス。
      ガス水をくださいとお願いしたらペリアしかないということ。そのままお飲みになりますか…、それともレモンをと聞いてくれて、ライムを搾ってもらいました。ペリエには不思議とライムの明るい酸味があうのです。

  3. マンダリン

    ありがとございます。
    はい、スカイビルでした。午後の時間にパフェを食べたのが古い思い出です。
    お酒を飲まない時のガス水も良いですね!私はそれでお酒を飲んだ気分になれます。

  4. いにしえ

    サカキさま
    ああ、ビーフコンソメがここに。ありがとうございます。ブログを拝読していて良かったです。帝国ホテルのブラスリーに加え、コンソメリストに即追加です。
    なかなか美味しいコンソメスープを出していただけるところがなくて、寂しい思いをしておりました。メニューにないことが多いですもの。凝った風のスープや。もいいのですが、コンソメは流行らないのでしょうか。

    • サカキシンイチロウ サカキシンイチロウ

      いにしえさん
      帝国ホテル、ブラッスリーのコンソメ、サラダニソワーズ、ウィンナシュニッツェルは永遠のごちそうdす。ひさしぶりにいってみたくなりました。
      コンソメスープはお腹にたまらないごちそう。
      お腹にたまらないからこそ、次の料理をおいしくさせてくれるいいごちそうなのだと思うのですけれど、今の世の中で、お腹にたまらないんだと主張する粋なメッセージはなかなか受け入れてもらえないのかもしれません。

      • いにしえ

        コンソメに限らず、前菜はスープにすると言うとえって顔をされることもありますものね。
        コンソメスープは、お腹を温めてくれるのと、前奏曲として味覚と嗅覚を開いてくれるものだと思っております!

        • サカキシンイチロウ サカキシンイチロウ

          いにしえさん
          胃袋をノックするステキな料理…、ですね。冷たくしても不思議と温かさを感じるのもうれしい特徴です。

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