トタン屋根のケーキ屋さん「ア・ラモート」

昨日、還暦の祝を熊本の人たちにしていただいたのだけれど、そのパーティーの会場に自転車が一台、滑り込んできた。
チリンチリンと鐘を鳴らして「おめでとうございます」と元気な声。
その自転車の主の顔を見れば日焼けして、なんともにこやか。
「トタン屋根のケーキ屋 ア・ラモート」というケーキ屋さんのご主人で、熊本では有名な人なんだという。
荒本さんというお名前。それでお店の名前がア・ラモート。

売っているのはパウンドケーキ。
その日、焼いた分を自転車に乗せて売る。
予約の電話を受けると、自転車でいけるところには自転車をこいでいく。自動車でも2時間近くかかってしまう人吉まで運んだことがあるんだという、みるとたしかにがっしりとした体つき。
参加者のひとりがサプライズでと、参加者全員分のケーキを持ってきて…、とお願いしてた。
ところが今日の売れ残りももってきちゃいましたと、自転車の荷台の上の箱の中には24本のパウンドケーキ。
一本で足らぬ方がいらっしゃったら…、といいながらたのしい口上と一緒にあっという間に全部売り切る。
その売り方がサービス精神に満ち溢れ、あまりに面白く、綾小路きみまろがパウンドケーキをもし売ったら、こんな具合になるんじゃないかって感じ。全部売り切り、ボクに対するお祝いも見事にまとめ、颯爽と帰っていく後ろ姿にみんな拍手した。

予定していないケーキを売りつけられた…、と言えなくもない。
けれど誰一人として不快な思いをするものなく、あっぱれ見事と声援を送り拍手したという不思議な体験。

いつもは大抵、熊本の下通りというアーケード街で売っているという。
だから翌日の今日。いるかなぁ…、と思って街を探してみたら自転車がある。自転車の傍らで、ニコニコしながら静かに立ってる日焼け顔のおじさん。
元気に、威勢よく売っているのかと思いました。昨日のようにたのしい口上で、待ちゆく人たちを楽しませながら…、と思ったその想像とはまるで違って、ただただ静かにお客様が近づいてくるのを待って売る。

そうだよなぁ…、昨日のような場は特別。
その場限りだからこそ、冗談もかくし芸のような歌もたのしい口上も、みているボクらのとって予想外で刺激的。
でも、そんな特別を毎日披露してたら特別じゃなくなっちゃう。
感動を日々、押し付けるような商売をする人たちがたくさんいるけど、普通であること。その普通を日々、粛々と繰り返すコトが商売の本質なんだとしみじみ学ぶ。
昨日の荒本さんもかっこよかったけど、今日の荒本さんはその数倍も格好良くて、感動的でありました。リンゴの味のパウンドケーキを一個買い、旅の土産にいたします。

 

コメント

  1. はっち

     以前テレビで拝見して、ステキなケーキ屋さんだなあと思っていました。
    「サカキさんの還暦祝」に呼ばれたんですね。いいなあー。良い友達をお持ちですね。
    次の日の様子を書いてくださって、ますますステキだなあと感じ入りました。ほんとカッコイイ。
    これでこそ30年続いたお店ですね。

    • サカキシンイチロウ サカキシンイチロウ

      はっちさん
      還暦祝いで歌を歌いながら胸を叩かれるのですが、バンッと筋肉が震える音がするんです。毎日自転車にのり、ケーキつくりでも体を使い、鍛え上げられた肉体に惚れ惚れしました。
      なのにケーキのやさしい味わい。人をしあわせにしようと一生懸命な人の仕事にウットリしました。

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