デミグラスソース、ベシャメルソース

通っているうちに徐々に好きになっていく店がある。
情熱的な一目惚れじゃなく、時間をかけて好きなところがひとつ、そしてまた一つと見つかって気づけば虜になっている。しみじみ好きになった店とでもいえばいいですか。一生のおつきあいになりそうな予感がする。
例えば伊勢丹の食堂街にある「西櫻亭」がそういう店で、第一印象は決してよくなかった。けれど来るたび好きになる。
特に今の時期、百貨店の中にあるというのが安心材料であったりし、お店の人の付かず離れずな適度な距離感もいい感じ。お店の天井が天窓みたいな意匠で、夜でもお昼。しかもテラスに座っているような感じがするのがボクは好き。
照明明るく開放的で、抜け感があるとでもいいますか…、気持ちが晴れて明るくなるのがありがたい。

桜色したテーブルクロス。ナイフフォークがバスケットに収まりやってくるのは今時のこと…、セッティングに時間をかけるとそれだけリスクがたかまるからってことなんでしょう。しょうがない。
ここの自慢の料理をちょっとづつというお弁当も好きなのだけど、今日は本当に好きなものだけわがままに…、とアラカルトからいくつか注文。
まずはガーデンサラダを選んでたのむ。好きなんです…、色とりどりの野菜が踊るようにお皿を彩る様がまず好き。葉っぱ野菜に紅芯大根、ビーツにハーブにカリフラワー。生で食べることができるコーンに豆が散らかる。

軽いドレッシングがかかっているけど、野菜の持ち味邪魔せぬ程度で野菜の香りも心おきなくたのしめる。
一人暮らしになると野菜を食べなくなっちゃう。
いろんな野菜を買うと無駄になる。
だからこういう多彩な野菜を味わえるってありがたいなぁ…、ってしみじみ思う。

メイン到着。
タンシチューとエビのマカロニグラタンにした。デミグラスソースとベシャメルソース。どちらも洋食レストランの花形ソースで、それを両方味わいたかった。
几帳面な長方形に切り出されたタンシチューのタン。ソースをまとってツヤツヤ輝き、フォークの背中で押すとホロリと崩れて繊維がほぐれてく。肉の繊維の間に蓄えられていた肉汁がジュワッとたっぷり滲み出してくる。マスタードを乗せると辛味と風味でソースの味がひきしまる。

マカロニグラタンのベシャメルソースはこの上もないほどなめらかです。よく茹でられたマカロニもやわらかでベシャメルソースが棒状になって口の中にあるんじゃないかとおもうほど。
タンシチューのタンをマカロニグラタンにうつしてほぐして、ソースと一緒に食べてみる。キチキチ、奥歯がきしむようなタンの繊維がベシャメルソースでぽってりとして牛肉コロッケを食べてるみたいな感じにさえなる。
タンシチューの付け合せのローストポテトにキャロットグラッセ。ブロッコリーにチーズを乗せて焼いたバゲット。どれもがおいしいソースのお供。心置きなく堪能しました…、オキニイリ。

 

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コメント

  1. nt

    そういう人になりたいですね。

    • サカキシンイチロウ

      ntさん
      ボクもしみじみそう思います。

  2. あーた

    実は私もこちらの第一印象はあまりよくなくて、伊勢丹といえばAGIOです。
    もう一度、チャレンジしてみようと思いました。

    • あーた

      (ほぼ)AGIO一択といいつつ、この間サカキさんの天丼についてのブログを読んでからどうしても食べたくて、天一行きました!
      マスク入れに、とビニールじゃなくて紙の袋が出てきたのも新鮮で。
      天丼はもちろんおいしくてお腹いっぱい大満足でした。

      • サカキシンイチロウ

        あーたさん
        AGIOさんの安定した実力はすばらしいと思いますよね。
        西櫻亭さんは、感度を落としてひたすらお皿の上に気持ちを集中させると、どっしりとして揺るがぬ世界に酔うことができる。いかにここが香味屋もどきであることを思い出さぬようにする…、ということがたのしむための条件かも(笑)。
        天一さん。
        絶品サラダを食べにいきたくなっちゃいます。

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