ソース抜きの菜摘み、ラタベルナのスカロッピーネ

ちょっと野暮用。市ヶ谷にくる。
10年近く住んだ街。思い出がありすぎてなかなか住んだ家には寄り付く勇気がなくて、お堀を挟んだ反対側で朝にしてみる。モスバーガー。
思い出のあるお店で実は、ここでボクはタナカくんのとある秘密の告知を受けた。この店でなぜか彼は「菜摘エビカツソース抜き」っていうのばかり食べていた。おいしいの…、って聞いたらおいしいと思えばおいしいっていうから、ならなんで食べるのと聞く。
そしたら「実は腎臓をひとつ売っちゃったんだ」っていうではないの。
どう応えればいいかわからなくってフリーズしてたら、実は腎臓がひとつ機能してないんだよね…。だから塩分を控えなくちゃいけなくってそれで菜摘のソース抜き…、と淡々という。ボクはすっかり動転して、ダメだよ、そんなの。タナカくんが死んじゃったらボクも死ぬからって泣いたお店がこのお店。

しばらくお医者様に作ってもらったダイエットプログラムに従って内食メインの生活をして、ふたりして痩せたのだけど半年ほどで元の木阿弥。だってひさしぶりに食べた菜摘エビカツソース抜きの味気ないことにため息ついた。
一生懸命かみしめて素材の持ち味を感じて食べればそれはそれでなんとかなるけど、毎日毎食がこんな味だと気が滅入る。
ちなみにこの店、代替肉を使ったグリーンバーガーを売っていて試しに食べたら不自然なほど歯ごたえが肉な感じで、でもソースの味しかしない不思議な食べ物で、これならソース抜きの菜摘の方が食べられるかな…、と思ったりした。空は明るく目が眩む。

 

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用事を終えたらランチどき。「ラ・タベルナ」にひさしぶりにくる。
イタリアンレストランのようであり、洋食のファミレスのようであり、居酒屋のようにも使える便利な店で、近所に住んでいた頃はよくきてた。
一時期、本当に気に入って昼夜問わずかなり頻繁に来てた。
ふたりでも来た。でもランチにはお互い1人でくることが多くて「先日、弟さんがいらっしゃいましたよ」なんて言われたりした。いい歳をしたおじさんふたりの関係性で一番おさまりがよかったのが「兄弟」だったのでしょうネ…、いろんなところで間違われた。「双子さんですか?」なんて言われることもよくあって、容姿よりもどうも仕草や喋り方が似ていたみたい。ずっと一緒にいるといろんなところが似てくるものです。
「おひさしぶり、今日はひとり?」って言われて今日は無言でうなずいた。
「いい岩牡蠣が入ってますよ」って言うので2つ。殻から外してレモンを搾り、唇つけて殻を斜めにするとスルンと口の中へと滑り込んでくる。ぽってりとして濃厚で命を感じる夏のごちそう。

ここでタナカくんが好きだったのは「スカロッピーネ」って呼ばれるひと皿。
薄切りの牛ステーキの料理なんだけど、一緒にサフランライスとスパゲティーを盛り合わしてる。
今日たのんだのは「中盛」で量は控えめ。
代わりにサラダがついてくる。
彼はサラダがつかないかわりに炭水化物がほぼ倍という「並盛り」をいつも食べてた。
サフランライスはパラパラで、スパゲティーは茹でおいたのを注文ごとにバジルオイルで炒めたもので、モサモサしてて口の中の水分を一切合切もってくような情けなさ。なのにこれが不思議とおいしく、それをゆっくり噛みしめるように味わっていた。

肉は二枚重ねで切り分ける。やわらかくってバターをたっぷり含ませ焼けてる。2枚を一緒に口にいれて、ちょうど歯ごたえがいいんだよね…、とボクも今日は真似てそうする。
スパゲティーの上で肉を切ることになる。だから一緒に麺も短く切れていく。「スパゲティーをナイフで切って食べるなんて、イギリス人みたいでかっこよくない?」って笑いながらザクザク切ってた。タバスコたっぷり。途中で塩もパラッとふって、気づけばまるで洋風そばめしみたいになってく。一緒にいくと「ヒューガルデンを飲んでもいい?」なんて甘えて、これをつまみに飲んでたなぁ…。
お腹を満たして席を立つ。「今度は夜にふたりでね」ってお釣りと一緒に言われて、はい!とうなずく。駅に向かって、さぁ、歩こう。

 

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