セルフサービス時代のさわやかな工夫

セルフサービスのお店が増えました。
ファストフードに限らずカフェや値の張る専門店でもセルフサービスをとりこむ店が増えている。
ほとんどの店が先払いです。
丁寧に料理を作る店では、料理を運んでくれる店もある。
利便性や合理性をうたうのでなく、お客様の自由な時間をたのしむための工夫のひとつとしてのセルフサービス。
そんな感じのお店もあって、それはこれから「人同士の接触を最小限にとどめる」アフターコロナの飲食店において、ひとつの方向性なのかもしれないと思ったりもする。

本来お店のスタッフが提供すべき作業をお客様に代行してもらう。
それがセルフサービスのお店にとってありがたいところ。さまざまな作業の中でもお店が一番お客様にやってほしい作業がおそらく「バッシング」。
食べ終わった料理を所定の位置に片付けてもらうというこの作業は、次のお客様をご案内するためにも迅速に、しかもお客様が食べ終わったタイミングに合わせて行われる必要がある。それをお客様任せにしてしまえることのメリットはとても大きい。

大きいのだけれど問題は、片付けてもらう場所の状態。
何しろお客様にとってお店で最後の印象をきめる場所になってしまう訳です。
いつもきれいに整っていないと、作業は減ったけれどそれ以上にお客様の再来を減らしてしまうこととなる。
いつもお店の人がきれいにしていればいいのだけれど、「いつも」を実現しようとすればスタッフがひとり張り付けにならなきゃいけないことになり、合理化のための工夫と矛盾していまう。
こういう工夫をすれば、お客様が自然と食器をキレイに後片付けしてしまうような食器の下げ場ができるんだなぁ…、と銀座の「シティベーカリー」にくるたび思って感心します。

どういう工夫をしているのか…。
これがとても意外でオモシロイ工夫で「完全に片付けない」という工夫。
定期的に下げ場にスタッフがやってくる。
けれどお皿やグラス。
トレイやカトラリーを必ず数個、残しておく。
食器の上や中の残り物は処分して、限りなくきれいな状態にしてあるべき場所にキチンと整理整頓しておいておく。つまり「後片付けのお手本」を残すという訳です。
キレイに片付けてくださいと言ったり、張り紙をしてどのような状態がきれいな状態なのか、みんながイメージできるかというとむつかしい。それでお手本を作って、これにならって片付けてくださいねという工夫。賢いなぁ…、ってしみじみ思う。来るたび関心をもってこの場所を見るのだけれど一度たりとも「汚い」と感じるようなことがない。よい工夫だということでしょう。

ちなみに今日の料理もおいしい。ハムとチーズのフォカッチャサンドイッチにフレンチフライをつけたのだけど、ふっかりとしたフォカッチャがオリーブオイルでこんがり焼かれて香ばしく、中にはさんだチーズがとろけてぽってりなめらか。
フレンチフライはあいかわらずザクザク壊れて、じゃがいもの香りや甘みをまきちらしつつとろけて消える。トマトのサルサが添えられていて、酸味たのしくフレンチフライの揚げた油をすっきりさせる。キレイに食べて、片付けやすいようにトレイの上を整えてキレイに片付け、店を出た。

 

関連ランキング:パン | 銀座駅有楽町駅日比谷駅

コメント

  1. cross

    賢い…。
    人の血が通っている知恵というか、どこかユーモアも感じる工夫でもありますよね。お店側の都合を一方的にお客さんに押し付けるのとは対極というか。
    また、お店の何か光る部分にコンスタントに注意を向けておられるサカキさんの目が、いつもすごいなあと思います。
    フレンチフライのサルサディップ美味しそう。止まらないやつですね。

    • サカキシンイチロウ

      crossさん
      こういうほがらかにしてたのしい提案。
      決して命令形じゃないんですよね。
      英語にすれば「If you please」。よろしければという提案。いいなと思いました。共有できてうれしいです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。