セルフコーヒーとシェアオフィス

池袋のゴリラコーヒー。ブルックリンから鳴り物入りで連れてきて、なのに3年も経たずしてゆるやかに、しかし確実に失敗しつつあるコーヒー店。
渋谷の店は規模縮小の末、先日閉店。
池袋の店はそれでもなんとかやっている…、と思ってきたら連休前にリニューアルしたというのであります。
ブランド存続のために試行錯誤がはじまったのか…、って思ってお店の中に入るとそこはかとなき違和感がある。よくよく見たらゴリラコーヒーのロゴがすべて取り剥がされて、「ローステッドコーヒー」って別のブランドのお店になってた。
リニューアルじゃなくて「閉店・再開業」という荒療治。調べてみればゴリラコーヒーは六本木に一軒残すばかりという惨状でした。ライセンスフィーをたっぷり払ったはずなのに、勿体無いったらありゃしない(笑)。

ゴリラ以外にもパリからパン屋のリチュアル、サンドイッチの「ンーモッツァ」。ロブスターロールの「ルークス」、ロンドンからは「フランツエヴァン」と運営会社が海外から買ったブランドは数知れず。
既にパリのコーヒー店「クチューム」は撤退、パンのゴントランシェリエはいつの間にか独自ブランドが乗っ取る形で使い捨て。スゴイ会社でございます。

お店のムードは変わりました。
居心地のよいソファ席がほとんどなくなり、椅子とテーブルに置きかわった。そのほぼすべてが可動式にて、お客様が自由にテーブル組み合わせ便利に使う。
その雰囲気はまるでシェアオフィスのようであります。

セルフ形式のコーヒー店がシェアオフィスのようにふるまうようなこと…。
最近、多い。
それが個人用の仕事場兼サロンのようになるのか、法人契約で打ち合わせや勧誘までもバリバリにできちゃうシェアオフィス的になるのか…、というのが違いで、しかも大きな違い。
スタバは前者。仲間同士の歓談はある…、けれどギリギリ打ち合わせじゃない微妙な雰囲気。ここは完璧に後者のように使われていて、今日もパソコンを取り出しガンガン打ち合わせする4人組。その隣のテーブルではふんわりとした商材の勧誘をし、される人々。こってり味の今的空間。

貸し会議室を借りるコストの「0」の単位がひとつ違った安さで使えるこういう場所を探してる人たちに、付け入られる何かがこういう店にはあって、付け入れられない何かがスタバのような店にはある。
コーヒーはおいしいんですネ。
ゴリラコーヒー時代からのビターで濃厚な味わいのコーヒー。
マキアートを作ってもらったんだけど、ポッテリとした泡の状態も上々で小さなカップ一杯分で十分20分ほどの時間をおいしくたのしめた。
ただ、彼らが注力するのは「コーヒーをおいしくつくるコト」どまり。客席に気持ちをむけない。よく言えばのびやかでお客様のプライバシーを大切にする空間で、でも悪く言えばほったらかし。でもその「ほったらかし」という特徴が、付け入る人に評価されてる…、に違いない。

ただ、そういう売上がないよりはある方がまし…、と考えるのも経営でしょう。
例えばドトールコーヒーが「喫煙者に寛容」という特徴で、一定の層からの支持を得ている。それと同じような割り切りがあればよし…、ってコトなんでしょう。しょうがない。
不思議なことにまとまった人数での打ち合わせをめったに見ないスタバでぼんやり口直し。ロールパイカスタードクリームをお供にしました。
イタリア菓子のカンノーロみたいな形で、けれどクリームを包み込むパイがサクサクとした軽い仕上がり。カスタードの香りも手伝いどちらかといえばシュークリームよりの味わい。生地だけ食べるとクロワッサンのようでもあって、フランス的なる瀟洒を感じる。オキニイリ。

ラテをもらいます。
アイスラテをトールサイズで、エスプレッソのショットを一杯追加してアーモンドトフィーのシロップ追加。
カスタマイズの内容が昔は手書きだったんだけど、今では印刷されたシール。最後の「Thank you」の文字がなんだか居心地悪そう。しょうがない。
スタバも最近、お店によって随分雰囲気が違ってきました。そこで働く人たちの笑顔の分量、お客様との会話や挨拶。「人と人との関わり合い」を大切にしている店は空気明るく、そこがぼんやりしている店には、そろそろ「つけこみたがりの人」が付け入る準備をしているような気もする。ちょっとハラハラ。今日はお店の中が暑くて、飲み終えたときにはすっかり氷が溶けていた。ロールパイからこぼれて落ちたクリームを氷の上に乗っけて舐めてひんやり味わう。さぁ、仕事。

コメント

  1. matsumoto

    いつも楽しく勉強させていただいたいます。
    スタバの印刷されたシール、驚きました。
    最近はそういう店舗もあるのですね。
    手書きだからこそ意味があるのに…と思います。
    明るい気持ちになりたいとき、店員さんとの挨拶やちょっとした会話に期待して、スタバに行くこともありました。
    カフェやレストランに行く理由の1つは間違いなく、人と人との関わり合いだと思っています。

    • サカキシンイチロウ

      matsumotoさん
      東京のお店はほとんど印刷ラベルになっちゃいました。間違いがないから…、ということなのだそうですけれど、手書きだからこそ伝わる暖かさをなくしちゃいました。
      勿体無いけどしょうがないのかもしれませんね。
      人と人とがふれあうことがレストランで食事することのたのしさ。お客様の立場としても、大切にしたいと思います。

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