サービスの王国、クリスタ(CRISTA)

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ランチを勉強かねてクリスタ。
かつてビーコンという名前のアメリカンスタイルのレストランがあった場所。もっと前に遡ると「ランチャンバーアンドグリル」というロイヤルホストとキリンビールが合弁会社を作って運営していたアメリカンレストランがあった場所です。
1990年のはじめくらいのコトだったでしょうか。このままいったらファミリーレストランは特徴をなくして駄目になる。駄目になった業態が生き残るためには安売りくらいしか選択肢は残されず、それが嫌なら高品位な次の業態を自ら作って変わっていかなきゃいけないんだ…、と、それで作ったランチャンも、どこか中途半端でなくなっちゃった。

cある分野で成功してしまった人たちはその成功体験に囚われやすくて、変わることが出来ないことが多いのですネ。
それを引き継ぎ、現在に至る会社はもともと倉庫屋さん。
素人ながらに成功しようと、ヘッドハンティングしたらロイヤルホストの幹部社員が沢山集まり、それで成功したという。
なんとも皮肉。

ココの会社の経営しているお店は「良いサービス」という観点でいいレストランを選ぶといつも上位に挙がる。しかも日本人が苦手と言われるフレンドリーで情緒的なサービスが得意な会社。
その最新作がこの店で、だからちょっとワクワクしながらやってきてみる。

かつての店の改装ではなく、一旦、すべてを撤去して一から作り直したんだというインテリア。
色っぽいです。ブース席がありベンチ席があり、次にきたらあそこに絶対座るんだ…、と思わせる席の配置としつらえにウットリします。

k-settingしかもお店の真ん中にサービスステーションを作ってる。
サービススタッフが集まり情報交換をして、自らのポジションに向かっていくための中継地点。
ボクらはその真ん前のテーブルについたんだけど、本来ならばホールの真ん中にあって座り心地の悪いテーブル。そ
こがサービススタッフからいつも気配りされる最良のテーブルになっているのに感心します。

テーブルの上のセッティングは簡潔。しかしとても親切。
お水の代わりにアイスティー。陶器のポットにギッシリ詰まったホイップバターに焼きたてのパン。
料理にコストをかけるお店は結構ある。
けれど「テーブルの上の状態」にコストをかけるお店は少ない。水じゃなくてアイスティーがあることで、食事に彩り添えるためのワインやお酒をたのまなくてもいい配慮。賢いランチにはとてもウレシイ。アリガタイ。

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3800円のプリフィックスがランチの中核。前菜、メイン、デザートという2皿ランチという構成。それぞれたのしく悩むに十分程度の商品揃えがなされてて、たのしく迷って3人三様の注文とした。
今日のおすすめの前菜は揚げたトルティアの上に野菜とスモークサーモン。お腹にドッシリたまるボリューム。にもかかわらず野菜がおいしく、お腹が重たくならない配慮。
シーザーサラダはみずみずしくて、レタスの状態はクリスピー。
ニューオリンズスタイルというバーベキューシュリンプはビリビリ喉の奥が辛くなるようなスパイススープと共にやってくる。香り豊かで、一口ごとに食欲が湧く見事な一品。

k-m1ゆったりとした時間が過ぎます。
料理をユックリ味わいたくなる空気をもったダイイング。
だからゆったり、
当然、会話もはずんでたのしい。
着席してからメインディッシュがやってくるまでほぼ1時間。
まるで退屈しないというのがステキなところ。

ボクがたのんだメインディッシュはカジキのグリル。
難しい料理です。
火の加減を間違えるとバサバサになるカジキのフィレが、炭で焼きつつシットリと。
甘みさえも感じさせる見事な状態。
サイドのレモンリゾットに薄く削ったサラミのチップをあしらうところ。魚の旨みに肉の旨みが混じっておいしい。
豚のグリルをたのんだのだけど、あまりにおいしく気づけばお腹の中に入って写真はなし(笑)。付け合せのマッシュポテトに悶絶しました。

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もう一品の今日のおすすめ。チキンのキムチスタイルという不思議な煮込み。
キムチを一緒にの込んだ鶏肉。辛くも酸味もほとんどなくて、白菜の甘みと鶏の旨みだけが残っているというオモシロイ味。最近、ニューヨークでキムチを使った料理が流行っているのでそれをなぞってみました…、と一言添える。その一言がおいしいスパイス。
ちなみにサイドにジャスミンライスがついている。これをちょっと借りて前菜のエビのスープの中に投入。一緒に食べるとジャンバラヤのような味になるのがなるほどニューオリンズな料理であります。オモシロイ。

k-xk-yそれにしてもおすすめの料理がどちらも味がはっきりしている上に、ボリュームタップリ。
何にしようか迷ったときに、おすすめだけを組み合わせるとお腹を確実に満たせるという粋なはからい。
よく考えてるって感心します。

一つ一つの料理がタップリ。
しかも最後のデザートもしっかりとしたボリューム感で、確実にお腹が満ちる安心感。
おしゃれな店ではとても大切。
今日のおすすめデザートは洋梨のコンポートとコーンブレッドの組み合わせ。生クリームがタップリ用意されていて、別々に食べるとそれぞれ別の味わいがあり、すべてを一緒に食べると洋梨のケーキのような食感、味わい。
コンポートと言いながら、シャキッと歯ざわり、歯ごたえあって完璧に熟した状態の洋梨を食べてるような満足感。
ピスタチオアイスクリームにはガトーショコラ。このチョコレートのケーキがビターでドッシリしていて、濃厚味のピスタチオジェラートに負けぬ濃密。互いが互いを引き立てあって、口の中をゴージャスにする素晴らしさ。

kristaアメリカ的な食事の〆に絶対おいしくあってほしいチーズケーキも、期待以上に濃厚ですべてに満足。
食後のコーヒーは大きなカップでタップリと。
アメリカ的を堪能します。

ちなみにこの店。
サービススタッフは全員正社員という今どきとても贅沢にして珍しいポリシー。
しかも新規採用は一切なし。
同じ会社の他のお店でスキルを磨いて、もっといいサービスをしてみたいと情熱持ったスタッフが集められてサービスしてる。
いわば会社のドリームチーム。
かわりにはじめて夜はサービス料をいただくようにしたのです…、そのサービス料分、絶対失望さえないサービスを心がけようという意欲の証といろいろ説明してくれたボクらのテーブル担当の人。
しきりに「フラッグシップ」だからと強調してらっしゃった。
大きいから。目立つから。売上が多くて古い店だから…、といろんな理由でフラッグシップ店舗ができる。けれど「グループ最高水準のサービス目指す人がいる店」。それをフラッグシップと呼べる会社が今まで他にあったろうか…、と思って唸る。また来なくてはと思う店。

 

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コメント

  1. koku

    「しかも日本人が苦手と言われるフレンドリーで情緒的なサービス」

    いつの間にか、180度逆転してしまいましたねえ・・・情緒的なサービスは古来から、日本人が一番得意にしてきたんじゃないかな。チェーン店の罪は本当に大きい。

    とはいえ、そのシステムお家元のアメリカが、じゃあフレンドリーな接客ができないかというと反対で、多分ですが、向こうは国民性として元からそういう要素が豊富なんだと思うんですね。情緒的かはともかく(笑
    だから「暴走を止める(笑)」ためにとりあえず最低限これに従ってよ、というマニュアルを作って最低限の効率を出そうと目指した。マニュアル作る側も、どうせこっから外れるんだから、ちとキツめに作っとくかー、みたいな。

    だけど、それをそのままそっくり日本に持ってきたら、日本の国民性、本当にそのままマニュアル信奉になっちゃって、フレンドリーどころか情緒というか「心」がまるごと消えてしまって、気がつくと店の中がロボットばかりになってしまった、そんな気がします。これもグローバリスムとやらの弊害の一つでしょう、間違いなく。

    • サカキシンイチロウ

      kokuさん
      みんなが同じサービスをしなくちゃいけない…、と思いこんで仕組みをまず作ってしまったのが、日本のサービスをロボットみたいにしちゃった一番の理由でしょう。
      サービスに個性は必要ない…、とまで言い切る人がいるほどで、ならばお客様の個性は認めるのか否か。
      考えてみれば、フレンドリーなサービススタッフも少なくなった以上にフレンドリーなお客様も少なくなりました。スマフォを眺めてロボットみたいに食べるお客様を、仕組みに縛られたロボットみたいなスタッフがもてなす店。
      そんな未来はいりませんよね。

  2. koku

    榊様
    本当にその通りだと思います。酷い客も本当に多くなった。しかも老若男女問わないというのがまたスゴイ。こないだ都内のカフェで若い男性店員に言いがかりとしか思えない内容で怒鳴り散らす老人を見ました。可哀想に泣きそうな顔でペコペコしてた。その隣で何も見えない聞こえない涼しい顔でスマホみながらサンド食べる若い女性。皿の上汚かったですねえ。老人のせいで待たされて並んでるしかしやはり黙ってるだけで勝手にイライラつのらせている中年オヤジ。何よりベテランと思しき中年オバさん従業員たちが誰も助けないのがまたすごい。思わず「警察呼びますか?」と後ろから言ってしまった。楽しい国になったもんです。おそらく店員とか客とか個性とかフレンドリーとか以前のところでもうこの国はダメですね。みんな病んでしまった。
    これからは飲食店業界もますます「階層・階級社会」になると思います。そのうちアメリカやオーストラリアみたく焼き鯖定食2000円くらい払わないと、まともな店には入れなくなるでしょうね。まあでもそれが本来の姿なのかな。今はあまりに安すぎて低賃金重労働が当たり前になりすぎてるから。これで客にまで奉仕しろなんて、ほとんど奴隷と同じです。とはいえ日本人全体が貧乏になったから、そうなると大半の人が外食できなくなるわけで、小金持ちが通う一部の店以外はバタバタ潰れるでしょう。どうやっても未来は無い気がします。
    この現実に孤高に立ち向かっている榊さんには本当に敬服します・・・

    • サカキシンイチロウ

      kokuさん
      食べるということに対する真摯な気持ち。
      何事においても、人のためにと思い体を動かす人たちのその労働に対する尊厳。
      食べ物とそれに関わる全ての人に対して、正しく関わるコトを忘れてしまっては、日本料理の世界文化遺産認定を返上してしまわなくてはならないと思います。
      なにより、食の場がゴキゲンな場所であり続けることができればと思う毎日。
      だから今日もゴキゲンに食べ、感謝しようと思っています。

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