ゴキゲンメゾン、シェ松尾的夜

chezcm zensai夜は会食。シェ松尾。
ひさしぶりのメゾン系フランス料理に合わせておしゃれ。
去年買ったスイカの柄の蝶ネクタイを一年ぶりに引っ張り出してキリッと結んで出かけます。

渋谷と言っても松濤という街。
日本でも有数の高級住宅街の中の一軒家。
駅からテクテク歩いて行ったのだけど、時折車が走っていきはするけれど、歩く人など誰もない。
頑丈な扉は閉ざされ、監視カメラがジジッと動いてボクの方を追いかけてくる。
整備の行き届いたゴーストタウンのような景色に、ほんのちょっとだけゾッとする。

さてメゾンの食事。お腹の入り口をこじ開けるための小さな料理。…、こじ開けなくてもおいしいものを見ればパカーンと開くんだけどね、とか言いつつパクリ。稚鮎をスモーク。食べやすいよう切り分けて、揚げたパスタで串刺しにする。串ごと食べて…、と言う趣向。青い香りと軽い渋みに確かにお腹がパカーンと開く。スモークサーモンにガスパチョと、泡をもらって会話も楽しくはじまった。

cm reizensaicm ebikaki冷たい料理が2種類続く。
一つは赤エビ。
ねっとりとした生のエビ。キャビアをまとわせ、上にはクリームの泡をのっけてやってくる。
エビは冷たい。
泡は熱々。
エビだけ食べるとひやっと冷たく、キャビアの塩味がエビの甘みを引き立てる。
ところが泡と一緒の食べると、泡の温度でエビの香りがフワっと立つ。香りだけじゃなく冷たいときには感じなかった旨味がグイッと顔をのぞかせウットリさせる。
エビの下には芋のジュレよせ…、ビーフコンソメの煮こごりです。

お皿の上のあれやこれやを組み合わせることでいくつもの料理を作って味わえる。フランス料理のステキなところ。
ちなみにお皿の左手前に置かれた緑のムース状のモノ…、コリアンダーのジェラートで、舌にのっけてシャンパン飲むと不思議においしい。すがすがしくてブドウの酸味が際立つごちそうさま。おもしろい。

太った岩牡蠣を軽く熱を通した料理。生ではない。けれど生の余韻を残して料理となった状態絶妙。右手にあるのはライムとハーブを凍らせ砕いた調味料。スプーンですくって一口試すとビックリするほど酸っぱくて、緑の香りがとても鮮やか。
牡蠣の旨味に疲れた舌を、リセットするため使うもよし。乗せて食べると、口の中で牡蠣の旨味と混じり合い、キッパリとしたおいしい輪郭を作ってくれる。いろんな食べ方を試したくなる組み合わせ。たちまち牡蠣が足りなくなった(笑)。

cm kyosen温かい前菜が続いてきます。
お皿の上にガラスの蓋。
イチニノサンで蓋をあけると、中から香り。
むせるほど。

料理はリドボー。仔牛の胸腺。
生まれてはじめて食べたのはまだ20代の前半で当時はとても珍しかった。胸腺なんて言っても伝わらなかったからでしょう…、牛の喉仏なんだよ、なんて言われて食べた。
食べ終わって「ムー」って鳴いたりしないかしら…、っ、声を出したら普通に喋れてホッとした(笑)。

ふっくらとして強い旨味とほのかで上等な内蔵臭が、繊細なのに力強き味。
仔牛の骨から丁寧にとった濃厚なソースを従え、ジロール茸をあしらいとする。まだまだ夏の真っ盛り。けれど料理の世界はすでに秋の恵みを探る。人の好奇心、欲求ってなんと贅沢。その贅沢に応えることは大変なコト…、と思ったりする。

cm sakana魚の料理続きます。
これもガラスの蓋を被ってやってきていた。
これは香りのためですか?と聞いたら、それよりやはり保温の役目が大きいですね…、と。

大きなメゾンの宿命として、テーブルと厨房の距離が遠くなっちゃう。
そもそもフランス料理のそれは宿命でもあり、だから熱々の料理は少ない。
日本の料理でも料亭料理は適温で、熱々の料理を食べようと思ったら割烹だとか食堂にいかなきゃいけなくなっちゃう。
本来の料理の味は熱々ではなく、ほどよく熱がとれてからその本領を発揮するという考え方もあるから一概に、熱々料理バンザイ!だとは言えないのだけど、やっぱり熱い料理はおいしく感じるモノです。
それでこういう工夫をする。

とはいえやはり蓋を開けた瞬間の香りの印象の強烈なコト。甲殻類の旨味と風味を移したソース。どちらかというとブイヤベースを凝縮したようなソースの周りを、甘鯛にエビ、貝や野菜が踊るように配置されてる。目に麗しいブイヤベースの再発見…、って感じがたのしく、おいしくもある。

気づけばそろそろ2時間ちょっと。会話たのしく時間を忘れて飲み、食べる。そろそろメインがやってきますからと、ワインを赤にかえることにする。

cm w1cm w2cm granite

デカンタージュの時間であります。実は抜染をしてそのまま一口飲ませてもらった。スパイシーで荒々しいけど力強い。すっきりとした飲み口で、そのまま飲んでもおそらくおいしい。アメリカ人やフランス人はおそらくこのまま召し上がる。イギリス紳士は絶対デカンタージュされるでしょう…、というソムリエ氏の言葉にころり。イギリス紳士を目指しましょう…、とデカンタージュと相成った(笑)。
ガラスの瓶の中で空気を吸わせただけで、荒々しさがおだやかになり深い旨みとやさしい風味を発揮する。料理のお供に飲むならば、絶対こちら…、とニッコリします。

cm usicm niku口直しのハーブとミントのグラニテはさみ、メインは仔牛のグリエとなった。
ミルキーにしてネットリ、まったり。前歯、歯茎をなでまわし絡みつくような肉感的な肉の食感。
肉汁がキレイに肉の中に閉じ込められてて、プックラ盛り上がった断面からしておいしく見える。

肉のおいしさもさることながら、添えられているエシャロットの甘いことにビックリ。聞けば塩釜焼きにしたのだという。
メレンゲで固めた塩で包んで焼き上げる、脂の強い魚や肉を焼くのに使う昔の手法で、そんな枯れたような調理法を、しかも野菜に使うなんてと感心しながら味わい食べる。

cm fromagecm dolceアラカルトを用意せず、コースメニュー1種類だけで営業をする。
テーブルを担当してくれたソムリエ兼務の副支配人の情熱的で誠意溢れるサービスと、他のスタッフとのフランス料理に対する熱量の圧倒的な差を感じたりもする。
つまり、いつも今日のような満足を得られるかどうかはわからない。
けれど少なくとも、メゾンの空気はゴキゲンです。

写真を撮ってもいいですか?ときくと、当店はSNS時代に生きているメゾンですので、と快諾をし、それのみならずベストショットの撮りどころとかタイミングとかを作ってくれる。
不機嫌な高級店もあれば、ゴキゲンな高級店もある。どちらが好きかは人それぞれで、不機嫌な評論家気取りが苦手なボクは、間違いなくゴキゲンな店を選ぶだろうなぁ…、と感謝しながら店をでる。

 

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コメント

  1. いさ

    初めまして。サカキさん。

    いつも楽しく拝見しておりますが、
    サカキさんの、スイカの蝶ネクタイが、とっても可愛くて、
    つい書き込みしてしまいました。

    シェ・松尾、「SNS時代のメゾン」だなんて、素敵な
    言い回しですね!

    私は、食いしん坊なので、
    カメラを用意していても、お皿が来ると、
    うわ~っ! 美味しそう! すてき! 
    と夢中になってしまいまして、
    食べ終わった後に、カメラに気付きます。

    暑い日が続いておりますが、
    どうぞ、お体にお気を付け下さいませ。

    サカキさんの更新を、楽しみにしてます!

    • サカキシンイチロウ サカキシンイチロウ

      いささん
      この夜も他のテーブルでスマフォでパシャッと写真を撮る人がいました。
      フラッシュをたいて、しかも大きなシャッターの電子音を立てて何度も。あれはダメだなぁ…、って思いました。
      お店の方からOKをもらっても、その場の雰囲気を壊してしまうような写真のとり方はダメなのでしょうね。
      SNS時代のマナーが必要。
      そう感じた夜でした。

      スイカの蝶ネクタイ。オキニイリです。秋はどんな柄の蝶ネクタイを買おうか、今からワクワクです。

  2. ひろ

    フレンチを通して、食べることや色々な外食の楽しみに気づいた者としては
    サカキさんのフレンチに関するblogを楽しみにしていました。

    サービスの方の熱量、素敵な表現!
    これのおかげで私はフレンチが大好きになりました。
    昔ほど頻繁には行けませんが、細く?長く、今通っているレストランを楽しんで行きたいものです。

    • サカキシンイチロウ サカキシンイチロウ

      ひろさん
      フランス料理って作り手と食べ手の創造力の戦いのようなところが好きなんです。
      一つのお皿の上に並ぶ様々な料理、ソースをどう食べるのが美味しいだろうと思いながら味わう。
      同じテーブルを囲む人同士で、こうすればおいしいかもね…、って言いながら食事をすれば2時間、3時間なんてあっという間ですよね。

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