クロワッサンにホワイトフラット。モンスナックで昼
西新宿でちょっと野暮用。まず腹ごしらえと「ポールバセット」にやってくる。
ひさしぶりです…、好きな店。
超高層ビルの地下にあるのに天窓通して外の光がやってくる。漆喰壁に木の床、木の椅子、木のテーブル。どれも随分使い込まれて味わいが出ていてそこにホッとする。
柱を囲むように設えられた大テーブルの向こうはイタリアンのサルバトーレ。互いを仕切る壁はなく、互いの魅力を融通し合うような関係。朝の時間はどこに座ってポールバセットっていうのもたのしい。
朝の時間はステキです。お客さまもまばらで静かでのんびりしてる。都会のど真ん中にいることをひととき忘れることができるこの空間はなによりゴチソウ…、オキニイリ。ハムとカマンベールのクロワッサンを選んでお供に何を飲もうかとちと迷う。
ここのカプチーノはふっくらとした泡がおいしく惹かれるけれど、朝のお腹にはミルクたっぷりのフラットホワイトがよかろうと、それを選んだ。
カウンターの後ろ側の壁を背中にエスプレッソマシンは置かれてる。
ポッドに挽きたてのコーヒーの豆を体重をのせグイグイ押し込みマシンに装着。
蒸気をプシューっと通しエスプレッソを抽出しながらその傍らでミルクをスティーム。
エスプレッソをそそいだカップ左手に、スティームミルクを入れたアルミのピッチャーを右手に持ってふりかえり、カップをこちらに傾けてミルクをそっと注いでく。
ミルクにエスプレッソがゆっくり混じり、それが模様を描いていくのを心おきなく見ることができるサービス。
出来上がる過程までもがステキな商品ってやっぱりステキ。
エスプレッソの飲み物というよりもおいしいミルクを一層おいしくたのしむための飲み物のような感覚。朝のお腹にやわらかい。
クロワッサンはハムやチーズを挟んだ状態でオーブンで焼いて仕上げる。だからクロワッサンは若干しっとり。バリバリ感はなくなっちゃうのネ。
でもバターの香りは力強くて芳醇で、クシュっと壊れて口の中ではパラつく感じ。これもおいしい、悪くない。
なによりカマンベールチーズがおいしい。白カビ系のクセのある香りが焦げた小麦の風味を引きたてて、軽い渋みや深い旨みがクロワッサンに混じって広がる。
ハムはホロリとほどけるようになって混じって、ゆっくり口の中でとろける。
お皿の上に散らかるクロワッサンの生地のかけらを指に貼り付け食べながらフラットホワイトをゆっくり飲んで、朝の時間をたのしんだ。
打ち合わせを終え、ひさしぶりのモンスナックでカレーを食べる。
創業昭和37年。2021年夏に入居していた紀伊国屋書店の補強工事のために閉店。
そのときの行列たるや、どこにこれほどのモンスナックファンが隠れていたんだろう…、ってびっくりするほどのすさまじさ。
ところが閉店後、半年ほどして場所を変え西新宿の今の場所にお店をあけたら誰も見向きもしないのネ。
結局、本物のファンやお店の近隣の人たちが集まる普通のお店になったという次第。
閉店だと聞いてやってくる、まるで屍肉を貪るハイエナみたいな人たちがたくさんいる。閉店が近づくとさみしくなってボクは行かなくなっちゃう。山口百恵のラストコンサートにおける「そっとマイクをステージに置く」がごとき閉業がうつくしかろう…、と勝手に思う。
いつものようにカツカレー。タナカくんも好きなカレーで一緒に来てた。お店では二人それぞれ違ったものをたのんで分け合うのがルールのようになっていたけど、モンスナックでは二人揃ってカツカレー。
時間が少々かかります。
注文を受けてからトンカツを揚げていくので10分ちょっと。縦にザクザク包丁入れて切り分けて型抜きご飯の上にのっけてカレーを注ぐ。ずっと変わらぬ姿がステキ。
サラサラカレー。粉を使わず作っているからスープのような仕上がりで辛さもほどよく旨みが活きる。
角煮のような形の豚バラ肉がゴロゴロ転がり、それがクチャっと潰れる感じ。潰れてホロリと繊維がばらけて肉汁ジュワッと滲む感覚。どれもなんともなつかしく、なによりカツが熱々でよい。細かなパン粉がパラリとちらかり、脂ほどよく食べやすい。カレーの中には脂がかなり混ざってて、だからツヤツヤ。口の中がスベスベしてくる。けれどお腹をおもたくすることもなくあっという間にお腹におさまる。
おいしかったよ…、って空に向かって言ってお店をあとにする。