カキフライに煮かつ丼。鈴新の夜

夜に近所を歩くのはいろんなことを思い出させて、ちと辛い。
朝や夕方は通勤のためにひとりで歩くことが多かったから抵抗はなく、けれど夜には大抵ふたりで歩いた界隈。
でもいつまでも引きこもっていては前に向かっていけないからと、思い切ってなるべく遠くまで行ってみようと荒木町。杉大門通りを越えて車力門通りに入って、てくてく歩き「鈴新」まで来た。
あの店、この店。小さな通りにぎっしり並ぶお店の看板、ひとつひとつに思い出がありネオンがにじむ。
息を整えのれんをくぐり、入り口近くのカウンターの端に座った。創業されたご夫婦と息子さんの3人で切り盛りする店。夜は息子さんとお母さんのふたりで営業。のんびりとしておだやかな空気がうれしい。のんびりと待つ。

目当ては好物だったかつ丼。カウンターに「カキフライがあります」の貼り紙みつけて、カキフライも追加した。カラコロ、油の中で衣が爆ぜるようにして揚がっていく音。そしてまもなく、まずカキフライ。
今日は牡蠣が小さかったものですからって2貫づけ。細かなパン粉をぎっしりまとって、おいしい香りがやってくるからなにもつけずにそのままサクッ。衣の中はむっちりムチュン。牡蠣独特の海の香りが漂ってきてこういうカキフライって牡蠣を一番おいしい食べ方なんだろうなぁ…、ってしみじみ思う。
サイドに千切りキャベツとレタスの葉っぱ。手作りのマカロニサラダがまたうまく、タルタルソースもまた上等。2貫目はとんかつソースとタルタルソース、芥子までも使って食べる。メインのかつ丼がやってくる。

ここには3種類のかつ丼がある。
煮かつ丼にかけかつ丼、ソースかつ丼の3種類。
とんかつをタレで煮込んで玉子でとじる、いわゆる一般的なかつ丼が煮かつ丼。
揚げたてのとんかつをご飯の上に。
そこにタレでとじた玉子をのせて仕上げるのがかけかつ丼。
とんかつの衣のサクサク状態が持続するのが特徴でここの名物。ボクもそれが好きだった。
でもタナカくんの好きなのは煮かつ丼で今日はボクもそれにする。
普通のかつ丼を注文する彼に、かつ丼なのにカツがサクサクしてるってスゴくない?…、っていうとタレを吸い込んでしんなりしているカツがかつ丼らしいっていうこともできると思うよって言ったことがある。蓋をあけるとおいしい香りと湯気がフワリ。中にはみるからにしんなりした衣のカツに、沸騰したタレが作った細かな気泡の跡が残った玉子。そうそう、いつもこのかつ丼を食べていた。

脂を丁寧に削ぎ落として揚げたとんかつに、揚げたてのサックリとしたパン粉の余韻を残すしんなり衣がしっかり貼り付く。サクサク衣もおいしいけれど、タレと出汁を思う存分吸い込んだ衣には別のおいしさがある。
衣がおいしくなるだけでなく、タレや玉子にカツの衣の油や香ばしいかおりが移っておいしくなってる。たっぷりのタレがご飯に染み込んでいくのもゴチソウ。確かにこれがかつ丼の醍醐味なんだ…、ってしみじみ思う。
具沢山の豚汁が本当においしい。キラキラとした豚の脂で蓋されていて、その脂が熱い上に蓋した下の汁の熱々がずっと長続きするがうれしいところ。ふうふうすると味噌の香りがフワッとただよい、豚の端材ににんじん、大根、じゃがいもがゆらりと舞うのがオゴチソウ。
おいしかったよ…、っていいながら夜のわが町、歩いて帰る。ゆっくりと。

 

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