インペリアルなバイキングサール

帝国ホテルのインペリアルバイキングサール。
昭和30年代のコト。北欧のスモーガスボードから発想し、洋食という料理にまだ不慣れな昔の日本の人に料理をならべてふるまったらどうか…、と当時の支配人のアイディアで出来上がった日本のバフェの始まりの場所。
そのとき、料理作りを担当したのが後にムッシュと呼ばれて日本の料理界のスターとなった村上信夫さん。彼の流れをくむ料理で構成されたバフェが今日までたのしめる…、というので来ました。ひさしぶり。
牛ヒレ肉のパイ包み焼きにコイン状に仕立てたじゃがいものフライ、ほうれん草のクリーム煮、ライスコロッケ、鶏のから揚げを添わせてひと皿。姿も味もクラシックです。トマトクリームスープをお供に今日の今日のランチのお腹の準備。
テーブルに置かれたナイフとフォークのずっしり重たくキラキラしていることにさすが…、と背筋がのびる。

ガラス越しに設えられたメインキッチンで料理が次々整えられていく様子。調理人が最後の仕上げと盛り付けにキビキビ働くカウンターの周りに料理がならぶ景色もうつくしい。
氷の上に置かれたステンレスボウルの中のサラダ野菜。細切りにしたきゅうりの中にもキューブアイスがたっぷり入っているのにちょっとウットリしました。乾くと台無しになるきゅうりですからよい工夫。置かれた野菜の種類は少なめ。ひとつひとつの状態にこだわる姿勢も悪くない。
ドレッシングスタンドに6種類のドレッシング。フライドオニオンやベーコン、フライドガーリックと自分好みのサラダに仕立ててバリバリ食べる。

冷たい前菜をあれやこれやと。
シュリンプカクテル。カニとイカ、ロマネスコのサラダにシーフードのマリネ。薄切りにしたソーセージに帝国ホテル自慢のポテトサラダをちょっとづつ。
この料理はこういうふうに作るものだ。こういう味付けにするのが一番、日本人にはおいしく感じるはずなんだという確固たる自信に溢れた料理の数々。おいしく食べる。

ブイヤベースが置かれててそれをボウルにたっぷりもらい、バゲット添える。
バゲットちぎってオリーブオイルを注ぎ入れしばらく休ませパン粥みたいにして食べる。お腹の中があったかくなるおゴチソウ。

シュークルートにエスカルゴ、スクランブルエッグの上にミートボールをのせたもの。真鍮製の小さなフライパンに一人が食べるにほどよい量を盛り付け鉄板の上で温め仕上げた料理もおいしい。
おいしいのだけどあまりに強い「命令形」がちょっと窮屈。
バフェの楽しみ方のかなり大きな部分に、並んだ料理同士を組み合わせ、自分なりの楽しみ方をする。調理の最後の仕上げという、とてもたのしい一手間が食べ手に残されているということがあるはずなんだけど、ここでは創意工夫を発揮できない。例えばミートボールをスパゲッティの上にのせて食べてみたい…、と思うもここでは調理人の献身的な世話焼きに阻まれできない。カレーもビーフストロガノフもお店の人がよそってくれる。
これを親切とか、プロの責任と考えることもできるだろうし、だからこのバフェが好きという人も少なからずいるに違いなく、でもおせっかいすぎるとボクは感じる。もったいない。

創意工夫を発揮できそうな場所を探した。
見つけたのがパンのコーナー。
加工しやすいロールブレッドが目に入り、それにスライスソーセージ。
ポテトサラダにブルーチーズをふたかけほど。
パンを二枚にきりわけて、それですべてを挟んで手で押す。
ピッタリ密着したとこでナイフで2つに切り分け食べる。

ロールのおいしいことにウットリ。自然な甘みとバターの香り。ふっくらとしていて、けれどしっかりとした噛みごたえがある。口溶けも自然でこれをトーストしてバターを塗って食べたらさぞかしおいしいだろうって思ったりする。
ソーセージはムチュンと歯切れて肉の旨味と塩の風味を口に広げる。ブルーチーズの濃厚な香りがちょっと大人味にて、ポテトサラダのむっちり感ですべてが整う。自分で作った料理はおいしい(笑)。

甘い物で〆。チェリージュビリーを作ってもらう。バニラアイスクリームにリキュールで煮たダークチェリーをかけて味わう、甘く酸っぱく、冷たく熱い口がびっくりするめでたいデザート。帝国ホテルといえばこのチェリージュビリー、ベイクドアラスカ、ピーチメルバが名物で、デザートコーナーにはベイクドアラスカの味と形のババロアなんかも置かれてた。
それにしてもうつくしく整えられて並んだフルーツ。グレープフルーツやオレンジの並べられ方にウットリします。キャラメル、ピスタチオ、マンゴーのジェラート盛り付けオレンジ、パイナップルをお供に昼のお腹に蓋した。
すばらしいバフェだと思う。けれどボクはもっとおおらかなバフェが好き。どうせ作り置きなんだから…、というところからスタートしてそれでもおいしくたのしいんだという方に向かっていくのがバフェの進化じゃないかとやっぱり思う。それにネ…、働いている人の目がみんな眠っているのが気になりました。雨の昼。

 

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コメント

  1. すうさん

    確かに、カレーやハヤシライスはボリュームがあるからほんの一口欲しいのですが、「一口」が伝わらないです。大食漢に見えてるのかもですが(‘Д’)
    ちなみにエビフライ(ディナー)がサクサクでおいしいです。

    • サカキシンイチロウ サカキシンイチロウ

      すうさんさん
      おいしいんですよね…、特に外資系のホテルのバフェに比べると繊細で日本人好みに料理のすべてができている。
      でもちょっとおせっかいかなぁ…、日本人がよいサービスを考えるとどれもこれもがおせっかいになっちゃう。まるで子供扱いされてるみたいで、面倒臭さを覚えます。

  2. koku

    これはあくまで私の独断と偏見であることをまずお断りした上で、ブログを拝見して一つ思うことがあります。

    ちょっとイヤな言い方になってしまいますが、日本人は「その場で工夫して食べる」ということに慣れていない、というより、そもそもそういう認識自体が、あまりない気がするのです。

    バフェに行って観察(もちろん怪しまれない程度で(笑))してますと、出されたものをそのまま皿に盛って、単独でそのまま素直に食べてる人が大半のようです。
    かくいう私も、無意識でいると自然とそうなってしまいます。

    なので最近は意識して楽しむようにしてまして、例えば和洋どちらもある廉価バフェだと、バターのスクランブルエッグと醤油味のひじき煮などは大抵どこも置いてありますが、私はこの二つを混ぜてご飯と食べるのが好きでよくやります。
    が、大概、なにこのオッサン、ゲテモノ食いか、という目で見られます・・・ちと哀しい(笑
    でも、醤油バター卵かけご飯、好きな人は多いんじゃなかろうか。なんでそれはよくて、これはダメなんだろう。

    これは単に文化の違いかなと思ってまして、日本人が昔から食べてきた料理はもちろん和食ですが、これは大半が「既に完成されてる料理」で、言い方を変えれば「手を加えると壊れる」料理ですよね。

    日本人はおそらく、料理全般に対してそういう認識が根底にあるので、和に限らずジャンル問わず、出された料理はすべて完成されており「手を加えてはいけない」と考える、良く言えば、料理に敬意を払っている文化と言えるかもしれません。

    そういう意味でも、帝国のやり方は日本人には向いてるかもしれない。・・・実はバフェって、日本にはあまり向かない方式じゃないかと正直思っています。
    単に「コースより安く、いろんな種類を食べ放題」という「コスパの力のみ」で人気がある方式で、残念ながら「自ら創意工夫する」という食文化としては、食べる側はもちろん、バフェを出す側も、まったく定着してないというのが個人的な感想です。

    その点、外資系ホテルのバフェのほうが、出す側として解っているかもしれない。客が工夫できるようにあえて未完成形を出して余幅をもたせている料理が多い。
    言うまでもなく向こうも一流のプロですから、その気になればカッチリした料理を出せる。それこそコース料理のような完成形を。それをあえてしないんですね。

    ただ食べる側=日本人客には、もしかするとそれは合っていないのかもしれない・・・
    榊さんのブログで、舶来ホテルのバフェに行くと日本人より海外からの客が多くて日本じゃないみたいってよく書かれてあるのを拝見します。どうなのでしょうね。むつかしい。

    • サカキシンイチロウ サカキシンイチロウ

      kokuさん
      ボクも同じように感じます。
      簡単な朝食バフェにいっても、そこは創意工夫の発揮次第で豊かな料理を作ることができるはずなのに、そういう工夫をしようとしない。
      たまに、キュレーションサイトなんかで「バフェをたのしむ一工夫」とかって特集が配信されたりしますが、その内容がスクランブルエッグにケチャップじゃなくてカレーをかけたらすごいおいしい。こんな食べ方、みんな知らなかったでしょう?みたいなものだったりする。
      そんなことすら「おどろくべきこと」と受け止められる、それほどまでに食に対する好奇心を発揮できない人が多いのかなぁ…、ってびっくりさせられてしまいます。
      バフェだけじゃないのかもしれません。
      電車が次々やってくる駅のホームの端っこを歩けば危険というイマジネーションを発揮できない人が多いからでしょうか…、電車が来ます、ドアが閉まりますと駅はうるさく騒々しい。
      お客様を子供扱いする店がいい店なんだと評価されるこの国は、子どもじみた国なんだろうなぁ…、とも。
      大人が大人の責任において大人らしさをたのしむことができる場所が多くなればいいのになぁ…。
      そう思ってやみません。

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