イノダコーヒのハムトースト

移動の前に遅めの朝と早めのランチを一緒にとろうとイノダコーヒ。
東京駅の大丸百貨店の中にある店。この百貨店、各フロアにほぼもれなく一軒ずつ喫茶店が配置されてて、しかも関西に縁のあるお店が多い。本店が大阪にある百貨店だからということもあるのでしょう。
イノダコーヒといえば京都を代表する喫茶店。
マホガニーの柱やテーブル。深い赤色のベルベットのカーテン、椅子の張り地にピカピカの床。男性スタッフの白いウェイタージャケットに女性スタッフの赤いベストとどれをとってもクラシック。
店の片面が大きな窓で、外の光がたっぷり店の中へと飛び込む。なのに店の奥はほどよき影で満たされていて落ち着く感じ。なんだか不思議。しかもシャンっと背筋が伸びる緊張感も心地よい。

コーヒーたのんでハムトーストをお供にもらう。
銀の蓋付きの器に入ってやってくるスパゲティとも迷ったんだけど、今日の気分はパンだった。
注文するとテーブルの上が整えられていく。
まず冷たい水の入ったグラス。
ナプキンの上にフォーク。
塩の入った容器が並ぶ。
グラスにもナプキンにもお店のロゴが入れられていて、磨けるものはどれもピカピカ。テーブルの上がにぎやかに。そして明るくなっていく。
しばらくすると「おまたせしました」と注文していたハムトーストとコーヒーがくる。あぁ、料理がそろそろやってくるんだな…、という気配とともに静かにたのんだものがテーブルの上に並べられ、気配が静かに去っていく。

そのサービスのうやうやしきことにまたウットリ。
しかもすばらしいのが、うやうやしさが慇懃無礼にならぬようにと自制されているところ。
毅然としたうやうやしさとでもいいますか…。
これみよがしのお客様思いに気恥ずかしさを覚えたり、自己陶酔にしか思えぬ厄介なサービスをする店は苦手。
その点、この店。丁寧すぎず、お客様とのほどよき距離感を保ってくれるところがウレシイ。
オキニイリ。

口が狭くて背の高いマグ。
分厚く温められているから中のコーヒーの熱々が持続する。手に持ったときの重量感もごちそう感を煽ってくれる。口を当てるとポッテリとした感触もどこか贅沢。おいしい期待を作ってくれる。
カップの足元にスプーンがひとつ。小さな角砂糖がのっかってくる。もともとミルクと少量の砂糖が混ぜられているコーヒー。砂糖は苦味や酸味がまろやかにし、ミルクが旨味をふっくらさせる。そこにスプーンの上のほんの小さな角砂糖を溶かす。不思議なことに甘みは変わらず、苦味にくっきり、輪郭がつく。砂糖を増やした方が苦く感じるところにビックリします。オモシロイ。

そしてメインのハムトースト。トーストブレッドを使って仕上げたサンドイッチで目に麗しい。こんがり焼けたパンの間に上等なハム。薄切りにしたキュウリがはさまるだけという、シンプルなのにひとつひとつが的確でおいしく仕上がる。
目に美しいサンドイッチはたくさんあるけど、見た目も美しさがそのまま口の中にまで続いていくか…、というと決してそうでもなくて、内面のおいしさが滲み出してくるような外観こそがサンドイッチの真のおいしさ。二枚一組のトーストの一枚にバター、もう一枚にマヨネーズ。かすかなマスタードの風味もおいしく、サイドに添えられたポテトサラダも自然な味わい。満たされました…、オゴチソウ。

 

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コメント

  1. 匿名

    45年以上前に京都の本店に朝自転車で通ってました。
    近所の錦小路当たりの親父さんたちが、新聞を読みながらコーヒーをすすっていましたっけ。
    雰囲気は変っていませんね。
    コーヒー好きの東京の母親に、
    コーヒーの粉を買って送って喜ばれました。

    • 匿名

      ”としお”です。

      • サカキシンイチロウ

        としおさん
        旦那衆に愛されるようになって、喫茶店ははじめて本物…、って言うことですよね。
        旦那衆という存在が目に見えなくなってからの東京は喫茶店という文化そのものを手放してしまいそうになっているように感じます。

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