アサンドパパス、ラザニアの思い出
トロワグロのニューフェイス。
ふっかりとした全粒胚芽パンが目をひいて後先考えずに思わず買った。
さてどう使おうか…。
トーストにするとおいしいですよとお店の人は言っていた。
けれどこのふっかりでサンドイッチを作ってやろうとまず切り分ける。
1センチほどの厚さに切るよう気合を入れて、とはいえ肩の力は抜いてススっとスライス。思いがけずも上手に切れる。
たまごサラダとハムとレタス、それからチーズ。挟んでそれぞれ3切れに切り分け食べる。空気をたっぷり含んで焼けたふっかりとしたパンがクシュッと前歯で縮んで歯切れてポワン。自然な甘みと小麦の香りが口に広がる。おゴチソウ。
田舎から来た知り合いとお茶を飲むならどこがいいかなぁ…。
彼が昔、住んでた高松からくる友人をもてなしたいからと相談受けて、二人で出した答えがここ。
パパスカフェ。新宿の高島屋にありここだけ不思議なことにツーフロアーぶち抜きの高い天井ののびやか空間。置かれた調度もシャレている。
紅茶がポットでくるのもいい。アールグレイにアップルティー、ハーブティーなんかもあっておしゃれな上にたっぷり飲める。のんびりできて話が自然とはずむムードも悪くない。
そう言いながら友人と会い、意気揚々と帰ってきてその友人から「お前も東京の人になったんだなぁ」って褒められちゃった…、って笑ってた。そういう君はそろそろ生まれ故郷にに着く頃かなぁ。今日のアールグレイはちょっと渋めでございます。
ラザニアがどうにも食べたくビチェリンにくる。イタリアのトリノから高島屋へとやってきた由緒正しいカフェでランチにラザニアがある。
実はラザニアには思い出がある。
ボクが会社を潰してお金に苦労していたとき。
2009年に景気対策の一環として定額給付金、1万2000円がお国から支給された。
さてどうするか…、と使い道を相談しようと彼に聞いたら、クッチーナヒラタに行こうよという。
実はボクもそうしたいなと思ってた。懐具合のいいときには良いっていたイタリア料理のお店でとびきりうまくて高かった。苦労してからは行くこともなく、どうせお上からのあぶく銭。すっぱり使って元気になろうよと、予約して行く。ほぼ2年ぶりのことでした。
おひさしぶりとマダムが出てきて「あなたたちがまだ2人でいらっしゃるのにホッとしたわ」とニッコリします。
風の噂にボクが苦労していることは知っていて、でも一緒に苦労ができる人がいれば平気よ…、大丈夫って。
厨房からご主人が出てきて「俺は今日作りたくてしょうがないものがいっぱいあるんだ。だから料理は任せて頂戴」と言う。
そして料理が次々やってくる。
おいしかったなぁ…。
うれしくってありがたくって泣きながら食べた。
でもこんなに食べたらどうしよう…、お金は足りるの?って心配する彼に、今日はへそくりを持ってきたからひさしぶりに散財しようってもりもり食べた。
抜いてくれたワインも飲んで「生きるシアワセ」を思う存分、味わった。
おごちそうさまですとボクの前にお会計の伝票がきて、みると二人で2万4000円。
びっくりするボクらに「定額給付金スペシャルよ」ってマダムが言った。しかも帰るボクらにお土産と大きな紙袋をわたしてくれる。
みると中には凍ったラザニア。凍ったままなら一ヶ月はもつから、悲しくなったら二人で食べてネ…、って。だから今でも何か気持ちが落ち込んだらラザニア食べて、泣いて元気を絞り出してた。今日は一人でラザニアです。
パスタシートがザクッとフォークに抵抗し、シートとシートの間にぽってり、チーズとベシャメル。牛ひき肉のトマト煮がたっぷり挟まり味わい濃厚。
おいしいなぁ…、しみじみ勇気が湧き出す味わい。上等な生ハムが一枚のっかってチーズを纏ったサラダもおいしくみずみずしい。食後にケーキ、エスプレッソでお腹に蓋する。向かい側のテーブルの椅子に一匹、ボクの隣に一匹の熊さんがいて、なんだか気持ちがホッとする。
サカキさんとパートナーの方のお人柄がよく伝わるエピソードに心温まりました。
おいしいものを食べて元気にお過ごしください。
これからもブログ楽しみにしております。
edomaezushiさん
街を歩くといろんな思い出が溢れ出してきます。ときにその思い出に押しつぶされそうになりますけれど、食べてシアワセを感じた思い出に救われます。
食欲があるということが一番ありがたいこと。温かい言葉ありがとうございます。
東京から地方に嫁いで、夫の家族と小さく飲食業も営むものです
いつもサカキさんとパートナーさんの楽しく美味しい時間をおすそ分けして貰うことで、次に実家のある東京に行ったらどこで食事しようか、夫も一緒ならどこに立ち寄ろうか・・・などとお腹を空かせながら空想していました。
いつももらいっぱなしじゃ心が苦しくなるくらいに美味しい時間のおすそ分けです。今日は小さくとも店を開いてる身としては背筋が伸びました。そして東京に帰れる日がまた待ち遠しく思えました。
どうぞ明日からも、その次の日も、その次の日も、美味しくてご自分に優しい食事を。
ともすけさん
遠い未来のことを考えると、不安で仕方なくなってしまいます。
だから今日一日。そして明日、明後日と一日一日を噛みしめるように過ごしていくことが大切なんだなぁ…、と感じます。
東京という街が夢にあふれる場所としてまたキラキラ輝きはじめる日までがんばらねば…、と思います。
ご実家に到着されたでしょうか。
クッチーナヒラタは、なんといい話。
涙ものです。人と人の繋がりって素敵ですね
Leoccoさん
昨日、無事に里帰りを果たしたようです。
おそらく読者の皆さんは、サカキさんのおうちご飯も外でのお食事もの時も、一緒にお鼻をクンクンお口をモグモグさせながらご覧になっていると思います。
今日は少し切なくて心温まる思い出を共有しながらラザニアを一緒にいただきました。格別なお味でした。
これからもずっと、ブログを通してお食事ご一緒させてください。
kikoさん
一人で食べる機会が多くなったボクも、こうしてみなさんと一緒においしい経験を共有しているんだと思って食べるようにしています。
これからもよろしくお願いします。