まもなく終わりの箱寿司で朝

ひさしぶりに上方寿司ではじめる朝にしようと「箱寿司」。
新宿の西側。改札口を出た先にある地下街の入口近くにある店で、入り口脇にはショーケース。
レジが置かれてそこでテイクアウト用の商品をキレイに包んで手渡す。その手際がうつくしくって正確で見ていて惚れ惚れ。ニッコリします。
そのカウンターから一直線に厨房が奥へと向かって伸びていく。出来上がった箱寿司や巻きずし、あるいは細工寿司にふきんがかかってズラリ並んで注文されるのを待っている。たのむとそれを見事な手際で切り分ける。それにウットリ。
「盛り合わせ」というココで一番人気の商品たのんで、その厨房の前に並んだテーブルで朝のお腹を満たすことにした。

まずはバッテラ。
酢じめの鯖の上に薄く削った昆布。しっとりしてます。
それから箱寿司。鯛とエビと穴子の三種。
不思議なことに箱寿司といえばこの組み合わせが基本の基本。
茹でたエビには玉子焼き。
穴子のシャリには刻んだしいたけ。酸味の強いシャリがカチッとネタをささえて口でほぐれる。

海苔巻き、伊達巻。海苔巻きの芯にはしいたけ、かんぴょう、三つ葉にでんぶ。出汁をしませた高野豆腐と田舎の巻きずしと同じでなんだかなつかしい。若い頃には好きじゃなかったのに、なぜだか年をとるに従ってどんどんおいしく感じるようになった伊達巻。甘さがおいしいオキニイリ。

吸い物たのんでひと揃え。巻きずしの一個が端っこ。ひっくり返すと具材がたっぷりはみ出して、サービス精神旺盛でお得な感じが溢れ出す。
ところでこの店。10月一杯で閉店なんだという。
さみしいなぁ…、実はこの商店街。他にもボクのオキニイリの鰻屋さんが9月一杯で閉店になる。多分、施設全体の若返りを兼ねた新陳代謝の一貫で、けれど鰻屋さんは支店も続いて閉店という。
真面目で普通のお店がどんどんなくなっていく。しかもほんのちょっとだけ高級で、でも値段に見合った価値を作り続けたお店がなくなって、あとにやってくるのは安いけれども価値を感じぬお店だったりするのが切ない。もったいないな…、と思う今日。

 

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時間をつぶしにパイホール。
オキニイリの店がなくなっちゃうというニュースの腹いせにピーカンパイでも食べようか…、と思ったけれど、まだ未着。
泡がおいしいニトロコーヒーも今日はなく、しょうがないからコールドブリュー。
氷多めで作ってもらってゴクリと飲んだ。

ここのコールドブリューはなかなか上出来。飲んだ瞬間、軽い酸味を感じるのです。ところが酸味はあっという間になくなって深い苦味とコクが舌にひろがっていく。香りもよくてのどごしなめらか。あとから酸味がやってくる酸っぱいコーヒーは嫌いだけれど、あとからどんどん甘くなってくコーヒーは飲んでてたのしい。のんびりしたら仕事に向かってまいりましょ。

 

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コメント

  1. miatamore

    いつもこの「箱寿司」さんのことは「あぁいいなぁ、今度の帰国の時は行ってみたい」と思いながら楽しく拝読していたのですが、閉店ですか。間に合わなかった...長く続いてきた一本芯の通ったお店が終わってしまうのは致し方ない事情があるとは思いますが、とても残念。
    渋谷にできたという新しいビルの飲食店のリストを見ても、全然食指が動かないような人間にとっては、また一つ楽しみが消えちゃったな、と思います。

    • サカキシンイチロウ

      miatamoreさん
      渋谷にできた新しいビル!
      ちょうど、今日行ってきました。
      どこかでみたことのあるような店を、どこにもなかったようにでっち上げる手練手管にうんざりしました。
      普通のものが普通においしい。
      おいしいものをずっとおいしくありつづけるようにただただ正直に努力しているお店が報われる日本にならなきゃ…、ってしみじみ思う一日でした。

  2. すうさん

    箱寿司が閉店ですか。。。。
    昔、母がよくお土産に買ってきてくれました。小さい頃はそんなに好きではなかったけど、現在のかんぴょう巻・太巻き・昆布の乗ったバッテラ好きはあの頃に形成されたんだな
    って思います。絶対買いに行きます!!

    • サカキシンイチロウ

      すうさんさん
      小さい頃にはそんなに好きではなかった…。
      なのに大人になって食べると、あぁ、これだったんだって懐かしく思い出せる味ってありますよね。
      思い出をなくすって本当に切ないできごとです。

  3. 食欲

    地元では秋のお祭りの頃に特によくさば寿司を食べます。親戚のおばちゃんがこの時は手作りのさば寿司をいつも持ってきてくれていました。頭のついたままのさばを酢〆して、ご飯とさばの間にはこれもお手製のガリ。色は多分梅酢だからちょっと赤紫色、薄切りスライスではなく太目の千切り。市販のバッテラに比べるとかなり甘味が抑えられた、酸っぱめの大人の味。頭がついたままなのとあいまって、子供の私は一切れ、二切れでごちそうさま。すごい手間のかかったお寿司で、今なら喜んでたべるのになあ、と後悔です。でもやっぱりあれは大人の味だったんだよねー。

    • サカキシンイチロウ

      食欲さん
      尾頭付きの魚で作ったお寿司。
      ありました。
      近所の魚屋さんが新鮮な青魚があるときだけ作って届けてくれる寿司。
      竹の葉でくるまれていて開けるとまず見えるのが分厚い昆布。昆布の端からギラッと魚の眼が見えた。
      怖かったなぁ…、怖いばかりで興味が持てず一体、なんの魚を使っていたのか。味がどうったのかまるで今では思い出せない。
      今となっては本当にもったいない話。
      歳を重ねて苦手なものがちょっとづつなくなっていく。あぁ、やっと大人になったんだってそのたび思う。シアワセですね。

  4. のえまみ

    サカキさん

    あらら 箱寿司さんなくなっちゃうんですね。我が家ではそれ系の寿司のことは「大阪寿司」って呼んでました。阿佐ヶ谷の松寿司もなくなっちゃって…。築地や四谷のは、ハレのお高いものなので、庶民の大阪寿司が手に入れにくくなるのはさびしいです。
    いつもサカキさんの美味しい文を味わうのが好きです。
    むちゅんと歯切れてね。
    高田馬場の「バインミー」が、水道橋に支店を出しました。
    カフェラインにいらしたおついでにでも、チェックなさってくださいね。

    • サカキシンイチロウ

      のえまみさん
      いろんなお店のいろんなむちゅんが好きで、好きでしょうがなくって。
      そういえばカフェラインのゆでたまごをムチュンと最近、たのしんでいませんでした。バインミー、できたんですね。最近、水道橋には個性的なお店が集まりつつあるようで、出かけるのがたのしくなっちゃいます。
      ボクの母も「大阪寿司」って呼んでいました。庶民派大阪寿司は本場大阪でも受難の時代のようです。

  5. いにしえ

    サカキさま
    箱寿司さん閉店、しんみりしてしまいました。
    月に一度買うかどうかというくらいでしたが、新宿からの帰りにちょっと疲れているときなど、「ああ箱寿司さんで買っていこうか」と思い当たると、ちょっぴりホッとしました。私のお気に入りは穴子の三角巻きです。巻き加減が絶妙で、ふんわりしているのが好きです。
    ちょっと上等でちょうどいい、そんなお店が無くなってしまうのは寂しいです。
    個人で営まれているお店は応援のためにも、せっせと行かなくては。

    • サカキシンイチロウ

      いにしえさん
      ボクも三角巻きがオキニイリ。具材としゃりのバランスが良く、おっしゃるようにふっくらふんわり。口の中ではらりとほどける感じがおいしいですよね。
      個人経営のお店に厳しい今の日本の環境。オキニイリのお店がなくなってしまうのは本当に寂しいことです。

  6. しかく

    サカキ様
    はじめまして、「箱寿司」さん閉店。
    ずっとあると思っていたものがなくなるのは何だか残念ですね。
    私も三角巻き好きです。
    あと、9月に閉店の鰻屋さんは多分「双葉」さんかな?と思って拝見しました。
    「双葉」さんと「箱寿司」さんは姉妹店で、今回は経営者の方が廃業を決められたので全て閉店されるそうです。
    (先日、従業員の方がお客様と話してるのを聞きました)
    どちらも長くやっておいでのお店な分、寂しいです。

    • サカキシンイチロウ

      しかくさん
      ご推察のとおり、もう一軒は鰻の双葉さん。
      ずっとやってこられたお店がなくなってしまう。時代の流れの中で淘汰というにはあまりにさみしい出来事ですね。
      はじめまして、コメントどうもありがとうございます。いつも行っているお店がいつものようにこれからもあり続けるのは当たり前…、って思っていると悲しいことになるんだなぁ。だからなるべく贔屓にしなくちゃって思わされてリしました。またステキなコメントお待ち申し上げております。

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