まことやに来て、粋な夜

涼しい夜です。
朝、吹いていた強風の名残の風もどこかおだやか。ウキウキしながら家の近所の荒木町。
気持ちはすっかり居酒屋で、ひさしぶりの「まことや」に寄る。
小さな路地が縦横無尽に広がる街の、中でも小さな路地に面した小さなお店。週のまだまだはじめの火曜日。なのにお店の中はにぎやか。
入り口脇にすぐ厨房。厨房をグルリ囲んでカウンター。奥には居心地の良いテーブル席が置かれててほぼ満席。カウンターの角の席をもらって座る。
目の前に炭。炭の向こうに炭場があって、網が置かれて串ならぶ。煙がときおりフワリとたって、おいしい匂いに油が炭で爆ぜる音。作業台があり、鍋やフライパンが並んだコンロと小さいながらも多彩な調理器。
真剣な顔で料理を仕上げる顔に、ときおり笑顔が浮かぶのが、おいしい料理ができたんだなぁ…、ってウキウキできる。好きなお店でございます。

料理をあれこれ。たのむとすぐに料理がやってきて、しかもそれがおいしい…、そういう店は酒がたのしい。
例えばココにはいつも季節の野菜のナムルがいくつか。今日は豆苗。シャキシャキしていて、ごま油の風味と牛骨系のスープがおいしい。豆苗独特の軽い苦味が味ひきしめて酒ねだる。
ポテトサラダとマカロニサラダを盛り合わせ、上からたっぷり明太子マヨネーズをかけた料理は間違いない味。酸味がおいしいよだれ鶏も辛味、痺れがしっかりしてて酒がおいしい。なにより酒をおかわりすると猛スピードでやってくる。呑兵衛の気持ちのわかったいいお店。
ジックリ時間をかけて素揚げしたニンニクをハフハフ食べて、なんともゴキゲン。

串を食べます。
焼とんがおいしい店でもあるのだけれど、変わった素材の串焼きもいい。
中でもアボカド。
くし切りにして皮の部分をこんがり焦がして焼き上げたモノ。
実はホクホクで里芋みたいなスベスベ感。わさびとマヨネーズをたっぷりのっけてハフっと食べると口の中でとろけるおいしさ。

それからカマンベール。これもこんがり串焼きにする。
表面が焦げて中からチーズがトロリと流れ出してくる頃合いで、そのまま食べてもおいしいのだけどはちみつをちょっとつけると、風味や塩味、旨みが広がりなんともおいしい。

肉巻きトマトもオキニイリ。大きく切ったトマトをグルリ、豚バラ肉で巻き上げてこんがり焼く。肉の脂がとろけて縮み、焼いたベーコンみたいに仕上がる。トマトはトロリ。その食感のコントラストがまたオゴチソウ。

豚バラ肉の厚切りも焼いてもらいます。同じ豚肉なのに厚みが違っただけでまるで味が異なる不思議。なにより炭で焼き上げた香りがおいしい。脂が焦げて煙になって、それで燻されおいしくなる。ひんやりとした脂のおいしさにウットリします。
分厚いハムの間に切り目。なかにチーズを挟んで揚げたチーズハムカツ。細かなパン粉がザクザク歯切れて口に散らかる。ちらかりそれがチーズでつかまりハムと一緒にとろけてく。
クリームチーズをたまり醤油に漬け込んだモノ。キュウリと一緒に韓国のりで巻いて味わうスタイルが、これまた酒をねだるおいしさ。いい気分。

おいしい料理とおいしい酒で気持ちよくなり店を出る。
もう一度、店の写真を撮っとこうとカメラを構えてパシャリとやった。
そしたら写真の片隅に日本髪の女性が写り込んでいた。
荒木町をいつも流して歩いてる「流しの新太郎」さんと一緒にいるおねぇさん。
今日はひとりで三味線ならして流して歩く。
新太郎さんは今日はお休み?って聞いたら、現在入院中と…。
考えてみればボクが生まれたときにはすでに、流しとして日本全国を渡り歩いていた人です。その人が晩年を生きるに選んだ街がこの街。行政や何かの団体が彼を活かしたわけじゃなく、この街、この路地、この店みせが流しの文化を活かしたんだと思うとしみじみ、いい街なんだとほっこりします。
またいつか、2人でこの街を歩く姿をみたいもの…、って思ってしばらく三味線の音に連いて歩いた。夜のコト。

 

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コメント

  1. Runo

    つい最近、佐々木譲さんの「地層捜査」という小説を読みました。四谷荒木町を舞台にした推理小説なのですが、主役の刑事二人は荒木町の路地から路地へひたすら歩く、歩く。“すり鉢のよう”と形容されるその街の風情が気になって、ふらりと歩いてみたいと思っていたところでした。
    流しの方も健在とはますます気になりますが、正直なところ女性1人では少々気後れが。高級レストランでも路地裏の小さな店でも、パッと入って好きな物を食べてキュッと一杯飲んでサッと引き上げる、カッコイイお婆さんになりたいものです(笑)
    「地層捜査」、機会がありましたらぜひ。

    • サカキシンイチロウ サカキシンイチロウ

      Runoさん
      確かにこの街を一人でたのしむのって、かなりハードル高いかもしれません。男のボクも一人ではちょっとドアをあける勇気がでない店がたくさんありますものね。
      「地層捜査」。
      買って読みます。
      地層捜査のルートを再現する集いなんか、してみるとたのしいかもしれません。

  2. ボルテイモアのおかず

    凄いなあ、本物の流しの方!日本髪にお着物、三味線もちゃんと写ってますね。貴重なお写真を有難うございます。私も「新太郎さん」のご回復をお祈り申し上げます。
    (荒木町は私には、池波正太郎氏の’鬼平犯科帳’で確か,盗賊改め方の独身寮?があった所だと思います。史実に基ずいてる様ですね。それが頭にあったので、この流しの方はシーンにピッタリです。)

    • サカキシンイチロウ サカキシンイチロウ

      ボルティモアのおかずさん
      この人のあとをついていったら、どこかにタイプスリップしてしまいそうな、そんなムードがありました。
      こういう伝統がずっと残っていること。しかもみずみずしく生きているコトにありがたいなと思いました。

  3. koku

    コンクリの 路地に花咲く お江戸かな

    • サカキシンイチロウ サカキシンイチロウ

      Kokuさん
      チントンと 揺れるかんざし 夜の路地

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