ひとりたのしむ四谷三丁目ティンフックに尾張屋
昨日4月30日。ひさしぶりに家をでて、ティンフックに来る。
ちょうど一週間前に亡くした友人の葬儀の前日。コロナウイルスのおかげで最小限の列席者でと指示があり、しかもご遺族は遠く離れた九州にいる。葬儀列席は結局、ボクひとり。通夜のようなことくらいはしてあげなくちゃと彼のオキニイリのティンフックを訪れた次第。
ベトナムかあさんも彼のことをかわいがってくれた人。ひとりでやってきたボクにあれっ?と顔をするから実はと急逝を伝える。
泣きました。2人でウォンウォン、抱き合って泣いた。ひとしきり泣いたあとでお母さんが、大丈夫。食べてるの?ってボクの手をしっかり握って聞いてくる。いつもは慰め役のボクが昨日は慰められた。ちなみにこの店には彼が描いたおかあさんの絵が貼られてる。この町にはそういうお店がいくつかあって、これからしばらくそれらの店を訪ねて回らなくちゃと思う。いつものテーブルに座って食事のスタートです。
彼の好きだった揚げ春巻きと鳥カレー。
まず揚げ春巻きがやってくる。どうせ野菜を食べてないでしょう…、っていつもよりもちょっと野菜が大盛りで、葉っぱでくるんで2本食べる。残りは彼にと、テーブルのいつも彼が座っている側にお皿を置いた。そしたらお母さんがお茶も上げなきゃって、茶碗ふたつと急須にお茶。お茶を注いで2人で合掌。
鳥カレーはご飯半分。スッキリとした酸味と鶏の旨味と野菜。よく煮込まれて骨からホロホロほぐれる肉が奥歯にあたってとろけて消える。ほどよき辛さにお腹がじんわり動きはじめる。生きているとはすばらしきこと。またまいります…、ありがとう。
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葬儀を終えて、夜は彼が好きだったかつ丼にする。
四谷三丁目交差点の尾張屋のかつ丼。
お店に入るボクを見て、お茶を2つ用意してテーブルに持ってこようとしたお店の人が「今日はおひとりですか」って聞いてくる。
他にお客様がいらっしゃったから、ただ「うん、今日は」って言ってお茶を1つだけ。
かつ丼をお願いしますって注文したら「卵かためね」ってお店の人が確かめる。いつもだったらカレー南蛮とか煮込みきしめんだとか麺をたのんで2人で分ける。今日から注文はひとつになります。天井からブーンと低い音がして、ダムウェーターで2階の厨房から料理が降りてやってくる。
ふっくらとしたとんかつを、ふっくら溶いた卵が覆う。出汁の香りとかえしの風味、細かく泡立ちやさしく固まる。パン粉衣はしっとり濡れて、どっしりとした旨味に風味が口に広がるオゴチソウ。
それはそうと、彼は本当にこのかため卵のかつ丼でよかったんだろうか。
ボクは生卵が食べられないから卵はかためじゃなくちゃならん。けれど彼はすき焼きなんかも生卵をたっぷりくぐらせ食べていたから、もしかしたらとろとろ卵のかつ丼が食べたかったんじゃなかったのかなぁ…、ってちょっと思った。申し訳なし。
濃いめのタレがご飯の半分を汚して濡らし、残りのご飯は白い状態。そのバランスが絶妙で、一人前をしっかりお腹に収めてタクワンで器を拭った。そう言えばここのかつ丼を一人で全部食べたのははじめてだった。夜ご飯。
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初めてコメントさせて頂きます。
自分の好みよりも、相手の好きないつもの、を頼むのは、ささやかだけど確かな幸せてあったと思います。
御冥福をお祈り致します。
こうたんさん
自分のために何かをたのむことよりも、大切な人に食べさせてあげようと思ってたのむときのたのしいこと。
本当にしあわせであったと思います。
温かい言葉、どうもありがとうございます。
サカキさん、大変なことがあったのですね。
体調が思わしくないにしては、、と思っていたのですが。
大事な方を亡くされたとは。
サカキさんのかなしみを、温かなお食事が和らげてくれますように。
ご友人の御冥福を心よりお祈り申し上げます。
よおぜふさん
ご心配おかけしました。
いまだに体はふらふらします。自律神経のいたずらか、それとも精神的なものなのか。おそらくその両方で長引いているとは思うのですがさすがに辛い。
食欲がわき、食べるものをおいしく感じるということは心が健康である証なんだと、しみじみ思い知らされるこの一週間。
時間はかかるかと思いますが、気持ちの整理をゆっくりしながら新しい生活の仕方を手に入れようと思っています。
温かい言葉、ありがとうございます。
いちファンとして心からお悔やみ申しあげます。
大切な人を失った心痛がいつか和らぎ、心の中で暖かいものへ変わる日がくることを願っております。
どうぞ御身を大切に。
ご友人のご冥福を心からお祈り申しあげます。
まことさん
彼の死から3日ほど、ほとんど何も食べることができなかったのです。
でも食べなくては生きてはいけない。
そう思って食べると、体にいろんなものが染み込んでくるのがわかるのですね。
食べるって本当に大切なことなんだと実感すると同時に、負けちゃいけないと元気が湧いてくるのも感じました。
無理はせず。けれど着実に一歩ずつ前に進んでいこうと思います。ありがとうございます。
サカキさん、お見舞いを申し上げます。
私も突然の病気でパートナーを亡くしました。ちょうど大震災の年で、暗い街をマスクで涙を隠しながら歩いたのを思い出しました。
サカキさんの背に手を当てて、共に泣きたい気持ちです。
我慢しないでたくさん泣いてください。
時間はかかるけれど、大丈夫です。
ゆっくりと悲しみの周りに感謝や想い出がとりまいて、真珠のように美しいものになります。サカキさんならきっと、素晴らしい真珠を持つことができるとおもいます。
ご友人のご冥福と、サカキさんの回復をお祈りいたします。どうぞ、御身お大切に。
志乃さん
昨日の斎場ではマスク着用が義務付けられておりまして、顔の半分が隠れているということをいいことに思い切り泣きました。
ひとりで送るということもあり、しみじみと。
悲しさから逃げるのでなく、気持ちに素直になりながらおっしゃるような美しい真珠に形をかえるまで、ゆっくりと過ごしていきたいと思います。
榊さん 早くお元気になって下さい。
数日間ブログの更新がなかったので気がかりでしたが・・・。ご友人のご冥福をお祈りいたします。
榊さんとほぼ同じ世代の私です。人は上手に生きてゆく術を持つものだと思います。今までのブログからうかがい知る榊さんなら明るい日々をまた迎えられると!
マンダリンさん
還暦の歳の出来事です。今までの人生を糧に新しい人生を作れよ…、と彼が背中をおしてくれたものと思って頑張っていこうと思います。
サカキさま
心からお悔やみ申し上げます。
何かあったのかしらと心配していました。
どうぞこれからも無理をなさらず、でも私のためにいろいろなことを発信してください。
ウィンウィンババさん
ボク自身もいまだ内耳の腫れがひかず歩くとグラグラしてしまう状態。それで日記の更新が滞っておりました。
これからも無理せぬ範囲で、徐々に更新をはじめていこうと思います。よろしくご理解お願いします。
たくさんのステキでおいしいものを、楽しくシェアしながら召し上がるサカキさんとご友人の姿がテキストと写真から思い浮かぶようで、いつもワクワクしながらブログを拝見しておりました。
記事にされていたお店に伺った際、この店内のどこかにおられるのでは?と恥ずかしながらきょろきょろお姿を探してしまったことも…。
ご友人の安らかなお眠りを心よりお祈り申し上げます。
サカキさん、ゆっくりなさってお体ご自愛ください。
ごんたさん
食べるという毎日のコトをともにした友人。
彼を失うことはとてもさみしいことではありますが、こうしてこの記事を読んでいただいているみなさんとも共有していたんだなぁ…、と思うと、力強く感じます。
これからもよろしくお願いいたします。
サカキさま
昨年母がこの世からふっと消えてしまいました。
必ず来る別れでも、のごとく、不意にせつなさに心を揺すられます。
サカキさんのご心中お察し申し上げます。
でも、これからもあなたが召し上がるおいしいものは、きっと彼もいっしょに味わってくださるのだと思います。
今後ともサカキさんのおいしい(むちゅんと歯切れる)文章で「あぁおいしかった! ごちそうさま!」って私にも言わせてね。
くれぐれもご自愛ください。合掌
のえまみさん
目の前にはいないけれど、いつも一緒にいてくれる。そう思ってのんびりと哀しみが癒える日が来ることを待つことにいたします。
やさしいコメント、ありがとうございます。
サカキさま
更新が途絶えていたので心配しておりました。
お心いかばかりとお察しします。
どうぞご自愛くださいね。
あきさん
ご心配ありがとうございます。
徐々に、無理せぬペースでこれからも更新を続けていこうと思っております。よろしくご理解お願いいたします。
初めてコメントをします。ほぼ日でさかきさんの連載を拝見してからずっとファンです。私にも同じ様な友人がいるので、さかきさんの心痛如何程かと涙が流れました。お辛いと思いますが、彼はさかきさんの傍にいらっしゃると思います。どうぞご自愛ください。
みーさん
ありがとうございます。お腹が空くと、彼もそろそろ腹ペコかなぁ…、なんて思ったりしています。
心配していただいてどうもありがとうございます。
初めてコメントさせていただきます。
今は泣くのも供養、思い出すのも供養。
ご友人のご冥福を心からお祈り致します。
サカキさま、お身体を大切にして下さい。
ミミオさん
思い出すとつらく寂しいこともありますが、思い出すことで彼もよろこんでくれるんだろうと思うことにしました。
やっと料理を作るエネルギーも湧いてきました。あたたかいコメント、痛み入ります。ありがとうございます。
勤めに出ていたころ、尾張屋を贔屓にしておりました。カツ丼のお出汁の味の記憶とともに、このブログで、あるときはカウンターでサカキさんの隣に座り、あるときはテーブルを挟んで舌鼓を打っていたご友人のことを思い、涙しました。
どうかご自愛ください。ブログ、これからも楽しみに拝読いたします。
Adacciさん
特にカウンターで横に座り、同じ方向を見て食事するのが好きでした。今のさみしさが、よい思い出になるまでゆっくりと時間を重ねようと思っております。
あたたかいコメント、ありがとうございます。