こんにゃく番所で蒟蒻懐石

山形市の南側にある上山という街。昔はのどかな温泉街で、今では工業団地やワイナリーが誘致され、しかも近年、コストコまでもがやってきた人の動きが盛んな地域になってきている。その郊外。街道沿いの峠の入口に「こんにゃく番所」という店がある。
キレイな水が出ることから、江戸時代からずっとこんにゃくを造り続けてきた「丹野」というこんにゃく屋さんが、さまざまなこんにゃくのおいしい食べ方を提案したいと作ったお店。店入り口にかかった暖簾に「たかが蒟蒻、されど蒟蒻」と染め抜かれていて、気合を感じる。不便な場所にありながら次々人が吸い込まれていく、人気のお店。

昔の番所のような造り。
門をくぐると見事な庭に借景となる渓谷と滝。
店に入るとこんにゃくの売店があり奥に食堂。こんにゃくを炊いてる醤油の匂いがおいしい。
今朝の食事でも玉こんにゃくをスルメイカと炊いた料理ができていたけど、郷土料理の一つでもある。

こんにゃく懐石というここの名物料理を試す。
まずはメニューをと手渡されて、みると先付けから前菜、お造り、煮物、揚げ物、焼き物、椀物。そして食事と典型的なる懐石仕立て。これらすべての料理にこんにゃくが材料として使われているというのでワクワクします。
20人近くが悠々座れる一本木の大きなテーブル。

塗りのお膳がズラリと並び、次々やってくる料理もほとんどが塗りの器に入ってくる。蒟蒻という食材が居心地よさげにみえる器はたしかに陶器や磁器じゃなく、手触りなめらかな漆器だろうなぁ…、って思ったりする。

まずは一口と、売店で今一番人気という「ラフランスこんにゃく」がやってくる。ザラリとした舌触りや香り、味わいはまさにラフランス。ラフランスのピュレをこんにゃく寄せたゼリーのようなお菓子。
それに続いてブロッコリやパプリカを茹でて蒟蒻でまとめた野菜のテリーヌ仕立て。
前菜の盛り合わせはアワビ風だったり、黒豆風だったりと蒟蒻を使って作った小鉢がズラリ。同じ蒟蒻なのにそれぞれ食感がまるで違って、味わい、風味も異なるコトにちょっとビックリ。海藻と蒟蒻を細い麺のように仕上げた酢の物は、食べるとまるでもずくのよう。

続いてお造り。
蒟蒻とワカメを重ねて巻いたもの。
昆布締めにした蒟蒻だとかと、創意工夫が氷を敷き詰めた器の中にキレイに並ぶ。
ただこれを刺身と思い込もうとするとかなりの無理があるけど、ツルンと冷たく歯ごたえクニュクニュしているところを、刺身っぽいと思えば思える。

エビのイラストの入ったチューブ状の蒟蒻。
袋に切り目を入れてすするとなんとエビの風味があるのですネ。
しかもトロンとした食感が甘エビっぽくオモシロイ。

料理はテキパキやってきます。しかもひとつひとつ丁寧に、どういう料理が説明をする。その説明の仕方が堂に入っていて、しかも自然に「売店でお買上げいただけますから」の一言を忘れないのに商魂感じる(笑)。

そして揚げ物。ホタテ風の蒟蒻フライ。細かなパン粉がギッシリついてキレイに揚がったフライの姿はまるでホタテ。タルタルソースをつけて食べると、ザクッと歯切れてホタテの香りが鼻から抜ける。食べてるうちに徐々にホタテから蒟蒻に正体ばれていくのだけれど、ビックリするのがその断面。ホタテのように繊維が縦に入ってて、繊維一本一本が蒟蒻というには感心しちゃう。
蒟蒻の飛竜頭というのは、鶏挽き肉と蒟蒻を団子にまるめて揚げて煮浸し。蒟蒻ってそれそのものに味があるわけじゃないからいろんな素材にあわせて、変幻自在の料理ができる。オモシロイなぁ…、ってまた感心。

煮物は牛肉とゴボウを巻き込んだ凍みこんにゃく。
これが蒟蒻?ってビックリするほどゴリゴリとした固い食感。
牛肉とゴボウの旨みが染み込んで、なんともこれが肉っぽい。百合根を模した炊いたじゃがいもも甘くて味わい豊かにします。

お椀の種は豆乳と蒟蒻、アオサで作った豆腐。
上にチョコンと置かれた赤いあしらいはカリカリ梅を削ったもの。
すっぱく、カリッとした歯ごたえが豆腐のふっくらした食感を引き立ててくれるよき工夫。

蒟蒻をつなぎにつくった蕎麦を冷たい出汁でキリリと味わい、今日の〆。
大きななめこと味を含ませ炊き上げたどんこ椎茸が具材となって、ザクザク歯切れる食感独特なこんにゃく麺をおいしくさせる。蒟蒻で腹一杯になるのかと心配したけどなんのなんの腹一杯。

しかも食材が蒟蒻のコト。どんなに食べても体にいいんだって思って食べるとなおおいしい。ちなみに聞けばこれだけ食べても400キロカロリー程度しかない!お医者様に褒められそ。
それにしても「ものを作る」というコトの大切と、そのものを「いろんな売り方」で売り切るということに執着することの凄さを学ぶ。メニューにはなく、これサービスですと例えばかぼちゃの蒟蒻寄せや、玉こんにゃくを持ってくる。どれも食べればおいしくて、しかも売店で買って帰れる。つまりこのレストランは物販コーナーのテイスティングルーム。結局みんな食事を終えて、お土産買って帰ったものね。ゴキゲンでしたたかなビジネスモデル。見事なり。

 

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