かつ丼とクリームソーダ。

ときおり無性にかつ丼を食べたくなる。
とんかつ定食じゃなく、かつ丼。かつ丼という料理は元気と勇気とサービス精神に溢れた料理だと思う。ご飯の上にドサッとかつ煮がのっかり湯気をもうもうと立てて熱々。
玉子でとじられてもなお存在感を消さぬとんかつ。油に脂、汁をたっぷり飲み込んでふっくら仕上がる卵にご飯。
左手のひらで丼を持つ。手に伝わってくるあったかさ。手のひらが感じる重みに器に触れる唇が食べる前からもうおいしい。そして食べるとそういう予感以上においしい…、そんなかつ丼を食べに「あけぼの」までやってくる。
有楽町の交通会館の地下にあるカウンターだけの小さな店で、とんかつと揚げ物の専門店。でも一番人気はかつ丼で並と上があり上かつ丼がオキニイリ。漬物と汁、上かつ丼には小さなサラダがついてくる。

ボクが好きなかつ丼の№1は家の近所の尾張屋のかつ丼。
二番目はやっぱり近所の鈴新のかけかつ丼。
そして三番目がここのかつ丼かなぁ…。
それぞれが個性的で№1のはふっかりふんわり。№2のかけかつ丼はサクサクしっとり。そしてここのはざっくりドッシリ。
卵でしっかりとじられた好みの仕上がり。
カツは分厚い。
脂がほどよくのっていて、筋は切られてやわらかく断面をみると明るいピンクの部分が残る。
火の入り方が絶妙で煮汁はすっきり。
出汁はしっかりきいているけど醤油が控えめ。だから豚肉や卵の風味や味わいを心置きなく楽しめる。

最初はちょっと薄味なのかと思うのだけど、ご飯にもしっかり味は染み込んでいて食べるにしたがってどんどんおいしくなってくる。
味がしっかりしみこみながらもシャキシャキとした食感残したたまねぎや、彩りにしたさやえんどうと、丼の中のすべてのものがいい状態であるというのにウットリします。

白身の一部が半熟で、苦手だなぁ…、と思うも思い切って食べてみた。
ドゥルンと重たく舌にのっかり、しばらくペトペトその食感が定まらない。やっぱり好きにはなれない。けれどすき焼きや卵かけご飯を食べてたタナカくんの口の中はこんな感じだったのかって思うと、不思議といとおしい。
それにしても気持ちのいいお店です。
手をおしまぬだけでなく、言葉も惜しまずお客様に伝えるべきことをしっかり伝える。男の人はみんなおにぃさんと呼ばれ、カウンターの上の状態を絶えず見守りお冷グラスが枯れることがない。お客様が帰ろうと立ち上がると作業の手を止め、両手を体側につけ一礼。ありがとうございましたと言って見送る。決して慇懃無礼にならず凛々しく働く姿に惚れ惚れしてしまう。

 

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あけぼのでかつ丼を食べたらおかめでなにか甘いもの。
夏だったら絶対、いちごのかき氷。練乳をかけてもらってシャリシャリ食べてた。
冬にはかき氷がないから、さて何にしようかと思ってそうだ。
ソーダ水にしてみよう。
そういえばクリームソーダもあったはず…、と聞いてみるとあるという。小ぶりのグラスにメロンソーダ。氷が浮いててクルンと丸くすくい取ったバニラアイスがのっかっている。
ストローでソーダ水だけを吸い込むと甘くてシュワッと泡がはじける。バニラアイスクリームも甘く、スプーンですくって食べてるうちにどんどんとけてソーダが白く泡立ってくる。泡だけスプーンですくって食べたり、クリーム混じりのソーダを飲んだり、ソーダの水位はどんどん下がる。
そう言えば氷の凹みに溜まったソーダをストローでチューチューするのが好きだったなぁ…。真似してみるとひときわ冷たく泡も細かで本当においしい。オキニイリ。

 

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コメント

  1. junchan

    たまに、無性に食べたくなるもの、ありますね。
    かつ丼はボリュームがあって完食できる気がしないので、外でかつ丼を頂くことはありませんが、サカキさんの文章を読んでいると、自分も美味しく完食できるかも、と思ってしまうので注意しなくては(笑)締めのクリームソーダも美味しそうです♪

    • サカキシンイチロウ

      junchanさん
      定食だとご飯の量を減らしたりサイドを変えてもらったりと工夫しながらお腹の調子に合わせて食べることもできますが、丼となるとそういうワガママがあまりできない。
      どちらかというと命令形の料理ですよね。
      男の人は食べることにおいてはマゾかもしれない。作りての意向に従わなきゃいけない、命令形の料理が好きですものね。

  2. Furu

    あけぼのでおにいさんと呼ばれるの嬉しいですよね。
    並んでいて席が空くと「おにいさんどうぞ!」と元気に呼んでくれる。(すっかりおじさんの年齢になっちゃいましたが笑)
    ちゃんと一人のお客さんとして扱ってくれるその重さがちょうど心地よく、ご飯も美味しく感じるのを思い出しました。
    ああカツ丼食べたいなあ。

    • サカキシンイチロウ

      Furuさん
      いくつになっても「おにいさん」。
      うれしいったらありゃしません。
      とはいえ先日、とあるお店で「おとうさん」と呼ばれて、それはそれでうれしくなっちゃいました(笑)。

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