お魚とコーヒー
おいしい魚を食べようと思って銀座の「魚久あじみせ」。魚の京粕漬けの専門店の2階に構えるイートイン。
四谷三丁目にもお店があって、昔は四谷の店にもイートインがあったんだそう。その頃、今の部屋に住んでたら重宝したに違いない。
たまに買って家で焼いて食べることもある。それでも十分おいしいんだけど、お店で焼いてもらうとひと味違う。イカやシャケなんかは家でも上手に焼けるんだけど、脂ののった例えば銀だらなんかは焼くのがちょっとむつかしい。
タナカくんはここの銀だらの京粕漬けが大好きで、だからたまにここに来て食べていた。通りの見えるカウンターにふたり並んで座ってネ。ご飯を食べたら何をしようか…、なんておしゃべりしながら銀だらが焼けるのを待つのが本当にたのしかった。
開店と同時に今日もにぎやかで、インバウンドさんもちらりほらりとやってくる。
さてオキニイリの銀だら京粕漬け定食。
焦げた粕や魚の脂のおいしい香りと一緒に到着。
こんがり焼けた魚に炊き立てのおいしいご飯。
味噌汁、小鉢ふたつに漬物がつきひと揃え。おいしい景色にニッコリします。
まずは皮をスルンと剥ぎます。薄くてねっとりした皮がなんの苦労もなく剥げていくのにウットリします。
ボクは魚の皮が苦手。パリパリに焼けた鮭の皮みたいのはいいのだけれど、ねっとり系はどうにもダメで、タナカくんは好きだった。
だから剥いだらタナカくんのご飯の上に贈呈してた。「こんなにおいしいのにもったいないよねぇ」って言いながらパクッと食べてうれしそうな顔をするのが好きだった。
ご飯と一緒に銀だらパクリ。銀だらの脂の旨みに粕の風味、焦げた香りが口に広がり、あぁ、シアワセだってウットリとなる。
ひと口目のご飯はちょっとしっとりしてる。硬めのご飯が好きだから、あれって一瞬思うのだけど蒸気を吹き出し、たちまちご飯が硬みを帯びる。その状態がなんともうまい。
ツヤツヤ、ふっくら。口の中でパラっとちらかりそこに銀だらの旨みや脂が混じってとろける。魚がおいしいだけじゃなく、ご飯までもがおいしいってステキでうれしい。味噌汁もしみじみおいしく、小鉢に漬物とどれも丁寧で上等な味。
ずっと同じでいつも同じ。特別変わったところはないけど、当たり前のものが当たり前においしくしかもお店の人もやさしくステキ。こういうお店がやっぱり近所に欲しかった…、って思いながら皮だけ残して食べ終える。
皮は空の向こうのタナカくんにお供えしました。オキニイリ。
食事を終えて打ち合わせまでの時間をのんびり過ごそうと、気づけば銀座ウエストのいつもの席に座ってた。数日前にも来たばかりなのに、好きなんだからしょうがない。サービスをしてくれたのがその時と同じ人。「ブレンドコーヒーをいただきます」に続いて砂糖とミルクもいただきますって言ったら、「いつもどおりでらっしゃいますね」って言ってくれたのにニッコリします。
銀のお盆にシュガーポットとミルクピッチャー。
いつもながらにキラキラで、注ぎ口に対して直角の位置についたオリジナルのピッチャーをみて、今日も銀座は大丈夫…、ってホッとする。
やさしい味わいのコーヒーがミルクを入れると一層やさしい風味になるのがオキニイリ。おかわり一杯、おねだりしたら仕事に向かってまいりましょう。