おかえりGINZA、煉瓦亭のハムライス

銀座3丁目の「煉瓦亭」。
明治28年創業。西暦にすれば1895年ですから120年を越える老舗です。なのに肩肘張らせぬ気軽で明るい雰囲気がお店のすみずみにみちみちている。饒舌でなく節度をもったサービススタイルも、あくまで料理とそれをたのしむお客様が主役の店という気持ちが伝わる。
お店の入り口には「おかえりGINZA」ののれんがかかる。
テーブルの上にはウスターソースと練り辛子、塩と楊枝がガラスの器におさめられ、ステンレスの蓋はキラキラ。分厚いタオル地のおしぼりを従えやってくるナイフフォークにスプーンはどれも実用的なものばかり。けれどキレイに磨き上がってキラキラしてる。
洋食屋さんってこれでいいんだ…、ってしみじみ思う。人気の料理はカツレツ、それからオムライス。ハヤシライスにメンチカツと洋食店の人気メニューの数々で、でもボクのオキニイリはハムライス。それを目当てにやってくる。

名前の通りハムが主役のご飯料理。おそらくハムがまだまだ贅沢な食品だった時代に生まれたゴチソウなんでしょう…、刻んだハムを具材にした炒めご飯の上に四角いハムのソテがのっかりやってくる。
そのハムのツヤツヤして光って食欲さそう様のなんともうつくしいこと。この世にこれほど凛々しく威張ったハムは他にないんじゃないかと思う。
ご飯はパラパラ。油をまとって口の中で滑って転がるような騒々しさで、ハムの他にはマッシュルームに玉ねぎ、グリーンピース。玉ねぎはシャキシャキ感を残して仕上がり、焦げた香りがまた旨い。塩とブイヨンで味が整うオゴチソウ。

お供にポークチャップを作ってもらう。
分厚い豚のロースを蒸し焼き。
繊維を断ち切り、ふっくらやわらかになるまで蒸したら、それをラードで揚げるようにして仕上げてく。
だからナイフいらずのフォークで切れる。
むっちりプチュンと歯切れつつ、豚の脂の風味や甘みを吐き出しながら消えていく。
豚肉のコンフィと言えばいいですか…、豚の旨みに圧倒される。上にのっかるパイナップルがぺっとり口に貼り付く脂を取り去って、口をスッキリしてくれるのがありがたい。
サイドはポテトフライとケチャップ炒めのスパゲッティ。このスパゲティーが太くてやわらか、ねっとりからむスパゲティーもたっぷりでぽってり重たい。ナポリタンとしても極上クラスでござんした。

ところで隣で食事をしていたご婦人方が、カツレツたのんでとんかつソースを所望なさった。お店の人は、当店にはとんかつソースはございません。ぜひ、ウスターソースでお召し上がりくださいと告げたのですね。
当初、ご婦人方はご機嫌ななめで「とんかつ売っててなんでとんかつソースがないの」と、それでもウスターソースで食べ始める。しばし無言で食べ続け、結局全部平らげ帰っていった。
ちなみにこの店。とんかつはメニューになくってあるのはカツレツ。ご婦人方もそれに気づかれたんだとしたらステキなコトではございましょ。ハムライスの上のハムをポークチャップのお皿にうつして切り分け、お皿に残ったケチャップと豚の脂をまとわせ食べて、お腹よろこぶ昼ご飯。

 

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コメント

  1. to22by

    お客さんの欲するものを提供するのがサービスなのか、それとも信じる美味しい食べ方を提供するのが本筋なのか。難しいですね。それは家庭でも同じです。一生懸命作っても結局辛いチリソースをどっと掛けて食べる家族がいたら、何のために味付けを頑張ったんだろうとやる気をなくします。

    • サカキシンイチロウ サカキシンイチロウ

      to22byさん
      料理は作った瞬間に調理人の手から離れて食べる人のものになる。
      それはじゅうじゅう承知のうえではあるけれど、自分の思いが伝わらなかったときの寂しさってないですよね。むつかしい問題です。

  2. batten

    料理が美しいですね、素敵です。久々に食べたくなりました。
    同じ洋食屋さんの「たいめいけん」さんは、再開発のためにしばらく別の仮店舗で営業だそうです。
    たぶん、穴子屋もでしょうし、タコオヤジが亡くなって女将が頑張ってる鮨屋もでしょう。
    そんなに街を壊さなくてもと思いますが、不動産屋は常に開発して稼いでます。

    • サカキシンイチロウ サカキシンイチロウ

      battenさん
      なんでもかんでも新しくしないと気がすまない人がいるんですよね。新しくすること以上に、大切に使い続けることが豊かな街を作ってくれるんだと思いますよね、

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